恒例夏ラブリーだ!思えば、昔はコレが森山グループの一年を通じて前半のライブ、あとは年末ラブリーまで指折り数えて待つ、って感じだったけれど、今年は今夜を含めればまだ12回もステージが聴けるんだもん、うれしいったらありゃしない。同席はオットと、私が手関節の手術をしたアマチュアドラマーのS石君、10年前一緒にドイツ(森山ツアー)を旅したジュエリーデザイナーのY井さん。ドイツのレーバークーセンジャズフェスティバルに行った時の想い出話などしながら、録音とレポートのセッティングを始めようと思ったらなんと!またやっちまった、今日は全部チェックして漏れがないつもりだったのに、MDにつけるバッテリーケースを忘れてきた。あ〜あ。このレポート、毎回これから始まるんだわ。しかたないので今日もメモだけ。レポートは、森山さんの喋りが多少抜けていたり創作部分があるかも。写真がイマイチで枚数が少ないのもお許しを。

8時10分スタート。今日はみんな違った色の上着。ノブ君は柄の入った青い半袖Tシャツ、音川さんはジッパーのついたデザインのシャツ、グズラさんはユニクロとおぼしきグレーのTシャツ、森山さんは白のシャツ。森山さんがカウントを出してImpressions、おやテンポがいつもより速いような。森山さんのリズム、タイトでスピーディー。音川ソロから、リムショットがパーンと響く。森山さんノブ君を見る、ベースの音がちょっとこもっているかしら。目にも止まらぬバスドラムのビーター。音川さんを煽るあおる。すごいわぁ、初日の一曲目だというのに。音川さんどこまで昇っていくのかしらん、唖然。このスピード、迫力、並のバンドに出せる音ではないけれど、もし他のバンドだとしたら2nd stageのもうファイナルに近いくらいの盛り上げ方じゃない?ノブソロへ。わ〜、もう、この音、ひぇーとのけぞったら森山さんと目が合ってしまった。森山さん楽しそうだ。両腕を大きく広げてシンバルを弾く、カッコイイ〜。ノブ君、半袖から覗く腕がよけい細く見える。ノブ君とグズラさんが止まってドラムソロに。この叩きようは何なの〜?だって、最初から音川ソロもノブソロも叩きまくった後なのにひとりでまぁ。これは山下時代から変わらないようだけど。すごく、ドラミングがタイト。叩きまくり、スピーディー。タタン!と入れてテーマに、エンディング、音川さんが大きくサックスを振り上げて下ろし、終了。

はぁー、はぁー、へぇー、とため息。マイクを持つのかな?と思ったけれど持たず。肉声で汗を拭きながらしゃべる、「昔は平気な顔をして叩いていたんですけれど・・・・すぐ平気になります」と、曲目を紹介しないですぐ二曲目に突入。

音川さんがソプラノに持ち替えてAfro Blue。これもちょっとテンポが速い感じ、森山さん目が汗で痛そう。音川ソロ、グズラさんのラインがうねって、流れを作り、その上に音川さんが音階を紡ぎ出す。この音の塊は、何というのかな、「ジャズ」なんだろうか。いや、「ジャズ」そのものなんだろう。音川ソロの吹きまくりから、テーマに戻る。ノブソロ。このバンドの研ぎすまされた、無駄がなくてシャープなサウンド、こちらも真剣に聞いていないと身を切られそうだ。

タオルで汗を拭いてマイクを持つ森山さん。「ありがとうございました」少し声がかすれている。「テナーサックス、ソプラノサックス音川英二!ピアノ田中信正!ベース望月英明!え〜、風邪じゃないんですけれど、3週間前から声がこんなになってしまいました、アレルギー性の鼻炎かなんからしいですけど。男が風邪引くとかっこいいって言いますよね、私の場合はどうもそうじゃないみたいで。風邪引き男と目病み女って古い言葉がありますよね・・・風邪を引いた男は声が渋くなって、女は涙目になっていろっぽい、なんて。これはいいかななんて思ったんですけれど、たいしたことはないですね。いつもと変わりばえしない曲をやりました。新しい曲をやりたいな、なんて思って音川さんと田中さんに始まる前に訊いたんですけれど、何もないって。・・・望月さんには訊かなかったんですけど(笑)。私はたまには変わった曲をやりたい、と思うんですけれど、みんなは私とやる時には間が空いているので、いろいろな曲を他のメンバーとやっているんです。そして戻ってきて私とやる時には、『ああ、いつものあの曲ができる』って思っているんじゃないでしょうか、ねぇ?まぁ、私にとってはコレしかないんです、曲が作れればいいなぁと思うんですが。私もピアノの前に座って何か曲を作ってみようかと考えてみないわけじゃないんですよ。でも、なんか聴いたことがあるような曲ばかりになってしまって・・・童謡か演歌しか思い浮かばないものですから。でも今日は新しい曲も一曲あるんですよね?」「比較的」と音川さん。「比較的、ですか。あと2曲、聴いてやってください」

バラード、I want to talk about you。サックスの音が曇りなく透明に立ち上って、よく響く。ノブソロ。ちょっと不協和音っぽい音をつかって、ちょっと不安な感じもあるけれど・・ああ、いい感じ、うっとり。音川ソロ。クリアな音で歌い上げる。う〜ん、後半、ちょっと高音が苦しいか、音川さんが合図してサビからテーマに。カデンツァーへ、きれいにまとめて終了。

Sound River。タムのチューニングが少し低いのかな?低音が響いてくる。おや、いつもなら入ってしばらくアフロリズムなのに、いきなりノブソロ4ビートから始まる。森山さんの腕が大きく広がってシンバルを揺らす。ノブ君長い腕をちょっと伸ばせばピアノの端から端まで、低音から高音まで簡単に届く。この細い腕が、と思うのだけれどとても力強い音。森山さんが掛け声、上体はほとんど動いていないのに四本の手足は千手観音状態、手足全部で8本はあるように見える。音川ソロ。スティックが飛んでバスドラのペダルの下に入ったが、踏むのには邪魔にならなさそう、大丈夫だな。音川さんが吹きまくる後ろで、これでもか、これでもかと森山さんが叩きまくる。音川さんのけぞり、サックスのベルの中にマイクが入る、わー、よく息が切れないなぁ。スティックがまた宙を舞う。ドラムソロ、長いぞ、おお〜。大丈夫かしら、体調はあまり良くないはずなのに。森山さんは体調が悪いとなおさら叩きまくってしまうことがあるから心配だわ。ありゃ、まだ叩く。ソロのエンディングからテーマに入るぞ!の一瞬の眼光の鋭さよ。テーマに戻り、終了。ほぉ〜。「田中信正!音川英二!望月英明!しばらく休憩します」

お、2部のスタート早い。9時半は過ぎるだろうと思っていたのに、9:20からメンバーが登場すると、お客が慌てて席に着く。お隣の久富に串カツを食べに行っていて、戻るのが間に合わなかった人がちらほら。森山さんドラムのチューニング。

新曲、音川さんの曲でミディアムテンポ、この前の歌舞伎ホールでやった新曲のBlue Indigoだったかな。モード調の起伏がわかりにくい曲になりそうなんだけれど、グズラさんがしっかりラインを作ってくれている。音川さんのメロディーライン、なめらかで淀みがない。Softly,のメロディー?を入れた?ちょっと変わった終わり方をした。

曲目紹介はなしで音川さんのNew and Wonder Trilogyが始まった、アップテンポで小気味よい。ドライブ感がある。音川さん、今日はマウスピースの調子が悪いのかな?何度か調整している。ノブソロ、指が鍵盤の上を駆け回り飛び回り跳ね回り、森山さんに向かって仕掛けていく。音川さんの繰り出すブロウ、スティックが飛んだ、よう叩くなぁ〜。ドラムソロ力強い、それも長いぞ。パカン!というフレーズが入ってテーマに戻るかと一瞬思わせ、音川さんも反応しそうになったがまだ叩く。

「ありがとうございます。これは、音川のレコードに入っている、組曲の、ある部分を取りだしたものなんですよね?」と今までは音川さんが説明していたところを「合ってるよね?」って感じで喋る。「なんて言う曲ですか?」「New and Wonder Trilogy」「あ、よく聞きます、それ。NEWでいいんですね」「NOWです(笑)」「失礼しました、英語は中学までしかやってないものですから。・・・来月9/18に私の地元、岐阜県の可児市、ala(アーラ)でコンサートをやるんです。ここでも何度も紹介させていただきましたが。ゲストに山下洋輔、板橋文夫を呼んで、田中信正とピアノ対決を(拍手)と、こういう企画なんです。当日配るプログラムで、まだ原稿なんですが、山下洋輔が僕のことをずいぶんほめて書いてくれているんです。あいつは普段は山の上に住んでいて、たまに山を下りてくると相手をなぎ倒して帰っていく高倉健みたいなヤツだ、ですって(ヤクザ映画のイメージ?)。alaのステージでは、昔話なんかしようか、と思っているんです。セットセットで、山下とのデュエットもありますし、板橋との時代のこともありますし。・・・・・板橋さんは何か話をするんでしょうか?(知っている人は笑)あの方は、すべてのエネルギーを演奏に注ぎ込む人ですから。私も山下さんと演奏していた頃はそうだったんですけれど、年をとってからは口ばかりになってしまって。身内にも言われるんです、『もう少し黙っていればかっこいいのに』って。でもこうなっちゃったからしかたないんです、しゃべれるだけ喋ってしまおうと。alaではMCの人も付かないので、私が一人で喋って進行するんです、田中さんにも手伝ってもらいましょうか(笑)。ある人が言っていましたよ、田中さんがピアノを弾いているところをみるとオーラが出ているって。でも演奏が終わってしゃべるとがくっとくるって、ねぇ田中さん。

・・・何かalaでは新しい曲をやろうかと思って、曲を作ってくれってお願いしたんですよ・・・・望月さんには頼みませんでしたが、ねぇ望月さん。あ、すいません、望月さんは頑張って痩せたんですって、この年ですからかっこうよく見られたいからっていうんじゃなくって、血圧が高いっていわれたぐらいでこんなに痩せちゃうんですから、よっぽど死ぬのが怖いとみえます。・・・何も言うことがなくなってきました、本当はあるんですが情けない話ばかりなんです。・・・・私の母親が85才を越えて、元気なんです。山梨で一人で暮らしていて、大丈夫だって本人は言うんですけれど、夜なんか心配ですから、介護してくれる施設に入ってもらったんです、最初はいやだいやだって言っていたのに、はいってみたらこんないいところはない、ごはんもおいしいし、友達もできて、って。それで私の顔を見て、『タケオ、お前はもういくつになった』っていうから、『もう60近いですよ』って言ったら、『あんたぁ若くていいねぇ、私はもう80を過ぎたよ』って(笑)、当たり前ですよね。今度はalaへ連れて行けって言われて、体も大変だろうし、と生返事しているんですけれど。

・・・・今までは『お父さんは遊んでお金をもらっていてイイナ』と言っていた娘が、お父さんも立派に仕事しているって何かで読んだんでしょうかね、出がけに『お父さん頑張ってね』って。うんとがんばりますから、皆さん明日も来てください。そうでないと、まだ予約が3人くらいなんでしょ(そんなことはない、60人は入ってます)。これでもう終わりじゃないんです。今度はいい曲なんです。井上淑彦の作りました曲で、Gratitude。いい曲は人のつくった曲なんです、ねえ田中さん。その次もいい曲なんです、板橋文夫の作った曲なんです、サンライズ。ねぇ音川さん。・・・望月さんはいいですね(笑)。もう喋ることがなくなってきました、このしゃべり方はどこかで聞いたことがあるような気がして・・・昔林家三平が喋っていたような気がして、情けなくなってきました。演ります・・・やります・・・(と自分に言い聞かせるように)

もう、ここまでひっぱって、おかしくて仕方ない、笑いをこらえなくちゃ、静かにGratitudeが始まった。だんだん、引き込まれていく。もう、放心状態です。ノブ君もっと弾いて欲しいなぁ。

サンライズ。音川ソロから。迫力が!タイトな感じでどんどん進む。ノブ君の足下にキセルがちょこんと置いてある。ノブソロ。なんか、すごいぞ!長い手足(医学的には手足、ではなく腕と脚だが)を充分生かして、飛ばし気味のソロと思ったがどこまで演るの、バトルか?それも延々続く。あっけにとられ、呆然と見るだけ。どんどんヒートアップしていく、ぎょぎょぎょ、まだやるか、両腕を広げれば楽々ピアノの端と端まで届く、低音と高音をガンガン使って森山さんに襲いかかる感じ、森山さんも負けていない、何てこった、驚き!

「音川英二!田中信正!望月英明! ありがとうございました、何とか呼吸困難にならずにすみました。3週間前から原因不明でこんな風になってしまって、可児市は家の周りには杉だけじゃなく稲やらの花粉が飛んでいるのかも知れませんが、娘も同じで血液検査をしても何も異常がないんです、結局原因がわからないんですが何かこの辺にあるんでしょうね(と胸を指すが、何かあったら困る!)。明日も頑張ります、ありがとうございました。」

曲目をしっかり確認していると思ったらあれ?ハッシャバイを飛ばしてグッドバイだ。そうか、ハッシャバイをアンコールに持っていくのかな?ん〜、言葉がないねぇ。起伏、メリハリ。息づかいが聞こえてくるようなサックスのフレーズ。森山さんのブラシワーク、アルコ(弓)かと思うほど音が伸びるベース。ふぅ。芸術。

拍手・・・とともに退場してしまう。ここでアンコールの拍手、と思ったけれど森山さんたらタオルを口に当てて「ゲホゲホ」言いながら出ていくんだもん、こりゃアンコールのお願いはしない方がいいな、と観客のみんなも思ったかも。森山さん気迫のドラミングだったけど一曲少なくてちょっと残念、明日も頑張って叩いてね!