アケタの店は15年ぶりくらいかなぁ、となつかしく思いながらも、7時前には到着しなくちゃ!とあせって西荻窪の駅を出る。見覚えのある医院の角を曲がると、もう何人かおなじみの顔ぶれが。予約の名前順に7時から入場。壁にいっぱい、武田和命さんの写真が飾ってある。最前列で空いているところはなんともう森山さんのドラムのど真ん前。近いなんてもんじゃない、今まで手を伸ばしたら届き「そう」はあったけれど、頭を下げたらシンバルに「当たる」、ってくらい。こりゃ、近すぎて耳が壊れるんじゃないか・・・しばらくしたら「後ろの方が混んできたので前に詰めてくださ〜い」これ以上詰めたら、膝がバスドラムに当たるよ!丸椅子をぎっちり並べた会場、すごい人口密度。ここで録音しようにも、聞こえるのはバスドラとシンバルだけになりそう・・・今日も録音はあきらめよう。

いや、この場所で叩いていてスティックが飛ぶ、ブラシが舞い散る、だとどんな事態になるか?森山さんと「ケガをしたらどうなるんだろう」「不法行為ではないのでミュージシャンに責任はあるんでしょうか?」「ホームランボールでケガをしても、打者には責任はないんだよね」「あ、でも予測不可能だったかどうか、ってことを考えないといけないかも」「店の責任はどうなるんだろう」などと話す。ヨッチャン先生、教えてください。

登場した音川さんも「昨日より狭いよ〜」。Impressions、からスタート。ん〜、欠けたトップシンバル、今日は鳴りが今ひとつのようだ。森山さんが気に入っているシンバルなのだが、ご機嫌をうかがって使いこなすのが大変である。音川ソロから。私のポジションからだと音川さんの陰になってノブ君が全然見えない・・。耳が割れそうと思いながらも、やっぱりワクワクする。ストレートな音が気持ち良い。森山さんの手、指使いがよく見える。うぇ〜、ノブ君の音が割れている。森山さんは、グズラさんの陰に隠れている、向こう側のノブ君を一生懸命見ている、ノブ君も森山さんの方を見ながらバッキング。森山さん、楽しそう。音圧がすごい、ノブソロから森山ソロへ。そうか、左手はシンバルとタムを同時に鳴らしているんだ、細かい技だなあ。

「ありがとうございます!田中信正!望月英明!音川英二!」・・・・・しばらく無言で、「はぁ〜」というため息。「なつかしい場所です、なつかしい顔も見えます、北海道からいらした方も。私も岐阜から来ました。いろいろ言わないでやります」う〜ん、私がいると、何でもHPに書かれるので警戒しているのかも知れないな。音川さんのソプラノ、新しくて、先が少し前の方に曲がっているシルバーの。アフロブルー。割れシンバルも、真ん中の所を叩く高音のサウンドはいい音がしている。ノブソロから。開演前に張り替えた真っ白だったタムのヘッドが、だんだん黒くなっていくのが見える。テーブルがないので床においてある焼酎を取ろうと思ったけど、かがむとシンバルに頭をぶつけそうだ。汗を袖で拭く森山さん。ベースワークが響く。盛り上がったところで音川ソロに。少し曲がったソプラノがかっこいい。森山さんの横顔、「クレイ」だったかのCDジャケットのころの写真とだぶって見えた。も

森山さん、タオルで汗を拭く。ノブ君もシャツをパタパタさせて「暑〜い」。

I want talk about you。おお、シブイ音のテナー。あれ、グズラさんジーンズだ。今までジーパンだったことあるかなあ、気がつかなかった。ホームグラウンドだから?ノブ君、よくうたう単調にならないソロ。旋律は美しいけれど、音がね・・・。森山さんブラシでつける。音川さんがソロを吹いてテーマに戻る。カデンツァの間にタオルで汗を拭く森井山さん、最後はマレットでつける。

しゃべろうかどうしようか、迷った顔をして一瞬の間が。森山さん田中さんの方を見てニヤッと笑う。田中さんどうしていいか判らず、うろたえる。Sound River。ノブソロから。4ビートに変えるタイミングを伺っているかのように見えるが・・・次のコーラスから4ビートに変わった。本当に森山さんの動きには無駄がないのがよく分かる。ノブ君必死。音川さんを見上げて音川ソロへ。音川さんの音列が面白く、ノブ君もそれに反応している。しかし、狭い。丸椅子に少し深く腰掛けると、私の(大きい)お尻が後ろの人の膝に当たってしまう。音川ソロのバッキング、ノブ君森山さんの方を見ながらバリバリと。音川さんの長い毛先から汗が。振り上げて下ろすサックス、ドラムソロ。もう目の前のシンバルが上下して鳴り響く、左耳が破れそうだ。「音」というのが空気の振動で伝わるものだということが実感できる。今日はスティックが飛んでいないな〜、落としてもいない。

「今日、出てくる時に娘に『お父ちゃんはいいとこ取りだ』って言われました。まるでお父さんは働いていないみたいに思っているんです。一生懸命今日は仕事をしています。少し休んで、また働きます」

休憩の間に、森山さんはこんどの中津川の「歌舞伎ホール」でのライブの宣伝。「アケタの店30周年」の記念ドラムヘッドを森山さんが「欲しい人〜」と言ったとたん、いち早く「ハイッ!」と手を挙げた岐阜県の女性がゲット。素早さが必要だったのだなぁ。

8:45。音川さんが足でカウントを出す。お、新曲?ミディアムテンポの曲、森山さんの横に譜面がないけれど、覚えたのかな〜。32小節、ではない。途中で半音階あがって・・・ブルース進行?でもなさそう。オーソドックスな感じ。立ち見多数、もし階上で何かおきたら全員閉じこめられるであろうよ。音川さんブロウすると頚が太くなって、かけているネックレスがくい込みそう。ピアノの音、休憩の間に明田川さんが調律してくださったおかげでずいぶん良くなった。音川ソロ。曲想はいいんだけれど、ソロを回していると今ひとつ盛り上がりに欠ける感じもするなぁ。森山さんすごい形相のソロ。最後の一撃が耳を直撃!テーマに戻る、結局進行はわからなかった。

「ありがとうございます、音川英二が新しく作りました曲で、昨日が初演です。何とか終わりました、今日初めてやった曲とは思えません(昨日演った)。この曲はなんていうんですか?」「Blue Indigo」Indigoは藍色で、ジーンズの染色をする染料でしょう?Mood Indigoって曲はあるなぁ、「どういう意味なんですか」「青色、って意味です」「ああ、色の・・・で、色がどうしたんですか」爆笑。青は藍より出でて藍より青し、っていう意味だろうか、などと考えてみたけれど、「Blues in D・・・のしゃれです」え、やっぱりブルースだったのか。「田中さんも曲を書くんですよね、この間そろそろ書こうよ、って話をしたんじゃなかったかしら。そういえば、雨って曲ありましたよね、どうしたんですか」「やってます」「僕も何か作曲できるといいなあと思うんですけれど、メロディーを思い浮かべると演歌になってしまうし、リズムだけじゃ曲にならないし、難しいんです。次は何という曲でしたっけ、ナウ。これは簡単なんです、でも本当は難しいんですよね、何の略でしたか」「New and Old Wonder」「どういう意味でしたっけ」「新しくて古い驚き」「おお〜、で、何に驚いたんでしょうか、くやしいものだからこんなことを言うんです、じゃあやりましょうか、勝つよ!」

この至近距離で見ているが、今までまだ何もおきていない。そろそろ何かおきそうな予感がするのだが・・・。この曲もおなじみの曲となりました。森山さんのロールがスネアからフロアタムにまわってきれいだわ。バスドラがすごくてセットが揺れている。ああ、疾走する感じが心地よい。音川ソロ。ンタッタ、ンタッタ!でいきなり全員が止まる、びっくり!音川さんも止まってしまい、そこからグズラさんだけ入り、ノブ君がつける、ピアノベースデュオに。ぎゃはは、ノブ君の音列がおもしろい、いったいこれは何風?リズムパターンを出し、鍵盤を叩きまくるノブ君、明田川さんもびっくりの奏法でしょう。ンタッタ、ンタッタからテーマに戻るがこのままでは終わらないな。あ、やっぱり森山音川デュオに突入。腰を中心にして、四肢、上体が本当にフリーな状態になっているのがよくわかる。音川さんのブロウ、すごいぞ、と思ったら今度は短めの森山ソロへ。ドラムヘッドにカンニングが書いてないやつだから、大丈夫かと心配したが、それは大丈夫。ンタッタ、に入るところでスティックが折れてKasumiさんの目の前へくるくる回りながら飛んできてすとんと落ちる。ンタッタ、のタイミングが一瞬合わないかと思ったがなんとか終了。ほお〜。歓声。

「9/18は可児市のAlaでやります。ピアノは山下洋輔さんと、板橋文夫さんに出ていただきます。3人ピアノがいるので誰が勝つか楽しみです。まさか田中さん勝つつもりじゃないでしょうね?今もそうでしたが、ジャズは勝ち負けです。必ず勝ちます」おお〜と歓声。

Gratitude。丸椅子はきついなぁ。単位面積当たりの人口は、バブルの頃のディスコに匹敵するんじゃないだろうか。音川さんの吹くテーマ、しんみり。ノブソロ。なかなかこのピアノではサウンドがきついところ、しっかりまとめたって感じかな。ああ、音川ソロに聴き入っていたらもう終わりのテーマだ。ブラシで暴れ回る森山さん。エンディング、ハイハットの真ん中をチリチリとかわいく叩く。

バカン!とサンライズ。少しテンポが速い気が。大丈夫かな、なんて余計な心配をする。音川ソロ。しかし、酸欠になりそうな狭さ。おお、テナーの低音が響いてかっこいいぞ。スピーディーなソロが展開していいわ。奇声をあげ、合図、ノブ君がリフを入れる。ウォーと吠える森山さん。あれ、もうソロ終わるかと思ったらまだ終わらない、音川ソロまだ続く、やれやれぇ!終わったところで音川さん、腕まくり。ノブ君カリカリカリと弾く音に森山さんカタカタカタと反応。音川さんのあごから汗がしたたり落ちる。すごいぞ、すごい。もっとやれ〜、もっとやれ〜!と思っていたら、もう終わりのリフが入った、残念。が!すごいぞ、すごい!ピアノとドラムのバトルに突入。望月さんもびっくり、って顔。わ〜わ〜わ〜、すごい!ギャンギャンガンガンバシバシドカドカの対決、もうぶっ飛んですごいの!やれやれ〜!あ、何だ森山ソロに行くかと思ったのにテーマになっちゃった、残念。終わったら、こんどは後ろの方から大歓声で耳が痛くなった。ノブ君楽しそう。

「え〜、ここのお店が30周年ってことで、おめでとうございます。私はこの店ができた時に来たのかしらね、どうだったかしらね。ということは私は30は超えてるっていうことで(爆笑)。今日の調子なら、40周年も叩かせてもらいましょうかね?(思わず喜んで拍手をしたら後ろから「当然じゃ〜ん」の声)昔、九州のジャズフェスティバルで、あるドラマーの方と、ドラム合戦というのをやりました。2度目は村上ポンタと京都で、一度だけの企画って言っておいてアンコールに応えて2回やったんですが、どちらも勝ちました(爆)。最終的な勝ち負けは、どっちが長生きするかっていうことになりそうですが、何とか40周年もやりたいです。本当におめでとうございます。ありがとうございました」

あれ、ハッシャバイに行かないのかな。このイントロは何の響き?クラシック?現代音楽?ベースとノブ君のサウンドのからみに存在感。グッドバイ、しんみり聴き入ってしまった・・・もう終わりなの、残念・・・。ありがとうございました!とメンバー退場。

アンコール!アンコール!と、拍手が鳴りやまない。うん、一曲残ってるよね。

「私の母親が85を過ぎて、一人暮らしをしているんです。しっかりしているんですが、物忘れが激しくなってきて。たまには、と思ってこの間も行ったんです。食材なんか買い込んで、掃除もして、夜一緒に食事をして。朝起きたら、『あんた、いつ来たの!』ってものすごくおどろいてました、私の方が驚きました」笑。「ある施設に行って、みんなで歌ったりゲームをしたりして楽しく過ごして帰ってくるんです。そこに送っていったら、『ウチの息子は楽器をやるんですよ』って自慢するんです、『ピアノを!』(笑)逆らいませんでしたが・・・」

おお、音川さん、いい響きだ。ハッシャバイ。ノブソロ、音川ソロ、ベースソロ。森山さん歌ってる。いいなぁ、楽しいなぁ。「ありがとうございました!田中信正!音川英二!望月英明!ありがとうございました!」

終わってからひょこっと彰太さんが顔を出した。武田さんの奥様と記念写真を撮らせていただいた。

さて、あすはドルフィーで板橋セッションだ。