大阪の八尾に巻き爪の治療のため出張(往診)し、近鉄とJRを乗り継いで京都に向かう。4時半入り、と聞いていたがちょっと手間取り、着いたらもうセッティングは済んでしまっていた。雨の中ふらふらと時間をつぶす。開場は6時、10分前には店の外の階段にいっぱいの人。常連さんらしきひとが「いやあ、こんなに並ぶのは初めて見た」と。システムが複雑で、ゴールドメンバー、一般会員、学生会員の順に入場となるが、ゴールドメンバーのK枝先生のおかげでいい順番で入場できそう。ピアノの後ろに席を取る。店のチーフにお願いして、演奏中は禁煙にしていただく、ご協力いただいてありがたい。もうMDは今日は録音トライするのやめた、腹立つ。

開演7時すぎ、Impressionsから。あら?出だしのところ、いつもと違うアレンジが。ノブ君黒の光沢のある長袖シャツ、ライトに映えてかわいい。今日は森山さん以外は黒シャツ。音川さんはつや消しっぽい黒の濃淡柄のあるシャツ、グズラさんはタートルネックの長袖シャツ。森山さんは一人目立つ白のシャツ。みんな色が明るいものを着てくれていた方が写真を撮りやすいのだけれどな。あ、しまったフラッシュが光っちゃった、いつもと違う古いデジカメを持ってきたら、設定が違ったのよ。いつもは人に「フラッシュ炊かないで」とお願いするのに、逆にお店の人に注意されちゃった・・・失敗。音川ソロ。けっこうお客の入りはいいぞ。すぐ左にスピーカーがあって耳が痛いが、ピアノの音もよく聞こえていいか。森山さん、ノブ君を見ながら叩く。ノブ君、よくこれだけ手が動いてフレーズがどんどん出てくるね。森山さん、サビでもりあげ、音川さんがつける。ああ、音川さんあごひげがのびてるわ。森山さん叫ぶ、ノブ君が掌で鍵盤をプレス。ノブ君、モニターの音を大きくしてくれとミキサーの人にゼスチャー。森山さんのソロ、短めだが大きな拍手。テーマに戻り、終了。音川さんがソプラノに持ち替える。

ノブ君のイントロもう少し続くのかと思ったが、早めに音川さんが入る。アフロブルー。いい音色だ。ノブソロ。ああ、心地いいわこのバンドのサウンド。森山さんのキープするリズムの、リムショットがカンカンと響く。音川さん真剣にノブ君のソロに聴き入っている。ノブソロ、すごい。叩きまくりと弾きまくりの間に音川さんが乱入。森山さん少し苦しそうな顔。音川ソロ、もうなんとゴリゴリの、無骨さも感じさせるようなストレートアヘッドなサウンド。「俺たちの出したい音はこれなんだ」という主張がビンビンと伝わってくる。森山さんタムの回し打ちをしてだんだんクールダウン、テーマに。テーマのメロディーに合わせて観客も首を振ってリズムをとって、頷きながら聞いている。

「こんばんは、なんとかここに来ることができました。さっき始まる前に1年経つんだね、と言ったら1年3ヶ月ぶりですって。1年に一度京都に来るとすると、あと4回くらいは来られるでしょうか。この前私の住む可児市で」「行きました〜」の声、拍手。「ありがとうございます。アーラというコンサートホールで山下洋輔とか、板橋文夫とか、井上淑彦を呼んでやったんですが、一日前にリハーサルに来た山下さんが家に来て、楽しく前夜祭をやりました。何か、紫綬褒章ってのを山下さんがもらったそうで、先を越されてしまいました。まあ、山下さんの方が2つばかり年上だからしかたありませんね。どうやったらもらえるんだって聞いたら、さあ、申請書を出すようなこともなかったし、やってりゃくれるよなんて言ってましたが。あれは天皇陛下がくださるんじゃなくて総理大臣がくださるんですよね」とメンバーに向かって。音川さん「さあ」そりゃ知るわけない。「私はそれなら天皇賞をもらおうって言ったら、そりゃ馬だろうって(笑)、大笑いになりました。あと4年と言わず、10年20年と叩いて、100才で現役ドラマーっていうことになれば黙っちゃおるまい」爆笑、拍手。「年に一回お願いします」拍手。「メンバー紹介します。ご存知、音川英二!田中信正!」ちょっと間をおいて森山さんにやっと笑う、・・・グズラさんあごに手をやる、「望月英明!」

I want to talk about you。テナーのテーマ。みんなうっとり。まぶたが下がる人も何人か。ノブソロ。あ、音川さんも目をつぶって、頷きながら聞いている。バラードから4ビートへ。ノブ君が見上げて音川ソロへ。もうちょっと長く弾いて欲しかったな、って贅沢かな?ノブ君のバッキングのタイミングが心地よい。いやほんと、グズラさん痩せたわ、ウエストがほっそり。これじゃ酔っぱらったときにおなかを見せても迫力ないよ、グズラさん。音川さんソロ、サビからテーマに戻って。スティックが飛ぶ、この手の曲でスティックが飛ぶのは珍しいなあ・・・持ち替えたときに飛んだのか、たぶん折れたんだろうな。カデンツァー。サックスを振り上げてエンディング。森山さん、マレットに持ち替えてシンバルを細かく鳴らす。

Sound River。シンバルのトップを鳴らすカンカンという音が響く。森山さんに笑顔が見えてほっとする。ノブソロ、アフロリズム。タムを回し打ちして合図、4ビートに。グズラさんぐいぐいと。ノブソロ、指が鍵盤をはね回る。ノブ君今日は黒鍵が飛ばないね、気をつけてるのかな?森山さんノブ君を見つめながら叩く。ノブ君の表情は見えないけれど、たぶん必死なんだけど楽しく弾いてるんじゃないかな?音川ソロのバックで叩きまくる森山さん、ノブ君もリズムを合わせて金属的につける。森山さんがすごい形相で、まるでソロをやっているみたいな叩きまくり、それを見たノブ君がまたノって、音川ソロの後ろで2人ですごいバトルを展開している。座席は丸テーブル、ステージに向かって斜めに坐っている私だが、隣の男性が興奮してどんどん前にでてくるので、脚を置くスペースがなくなってきた。グズラさん精悍な顔つき、すっきりして若返ったね。森山ソロ、暴れ打ち、乱れ打ち、長いソロだ、タムの回し打ちからッタタッタ、だけでテーマに瞬時に戻る、拍手拍手、テーマ終了。すごい歓声。「音川英二!田中信正!望月英明!ありがとうございます。少し休憩して、・・うんとやります」拍手!ベースの方に飛んだスティックを拾って、退場するときにタムの上に載せるグズラさん。お隣の男性は放心状態になっている。K枝先生は「やっぱりいいですねぇ」同感。

20:25、2部スタート。N.O.W。ノブソロ。う〜ん、何度聞いても飽きないなあ。それでも、1部の4曲ともノブ君のソロからだった・・・ベースピアノのデュオとか、サックスとのデュオとか、前はもっと変化があった気がするが、今日はこのままのスタイルで行くのかな。クラッシュシンバルが大音量をたてる。ノブ君のパワーショベル奏法に、森山さんがカリカリカリとつけ、リムショットをパカンパカン。本当に縦横無尽に鍵盤を飛び回る指、音川さんが笑ってみている。テーマのフレーズを入れ音川ソロに。あ、音川森山デュオだ!スティックが飛ぶ、すごい、延々迫力のデュオのやりとり。そこへベースとピアノが乱入し、いっそうパワーアップした4人での爆走。すごいすごい、もう興奮してしまいますわ!音川ソロ終了、ドラムソロへ。本当、人間業とは思えないなあ。怪物と評されるのも当然か。少しトーンダウンして、響き線をはずしたスネアをタムのように叩きまくる、スティック折れたか?さっきの「たっぷりやります」の言葉通り。

「ありがとうございます、音川英二!田中信正!望月英明!このセットの最初の曲は音川英二の作りました曲で、N.O.W.でした。  ・・いい曲書くねえ!」拍手。「めずらしく、ドラムが難しい曲なんです。普通は、板橋文夫、井上淑彦時代からメロディーはいくらむずかしくても、ドラムはただ叩くだけ、って曲がほとんどなんですが、今回音川にそれを言うのをうっかり忘れてしまったんです。仕掛けがいっぱいあるんで、四苦八苦しました。・・・・どんどん書いてくださいね。作曲できるっていうのはいいですよね、演奏していても何も残らない。普通はメロディーを口ずさむものでしょ、ズタタズタタなんて言いながら街を歩いている人はいませんからね(爆笑・・・いやウチの息子はダーンダーンダッダッダッダとサンライズのリズムを口ずさみながら保育園時代走ってましたがね)。皆さんの思い出に残るように曲を書いてみたいと思うんですが、チャラレ〜チャラララ〜と(演歌っぽく)、違う系統に行ってしまうんですよね、何とかならんもんですかねえ」「森山さんのドラムにはメロディーがありますよお」と観客席から。「ええ〜、次の曲は井上淑彦の作りました、Gratitudeです」拍手。

あれ?ノブソロ、すごい不協和音から。入ったと思ったらドラムとのデュオになった、おお初めて聞く展開。すごいぞ、撃ち合い、果たし合いみたいなGratitudeだ、感謝はどこへ行った?すっとブレイクして、またやり合ってるところに普通に音川さんがメロディーで割ってはいる、音川さん、なんか、すごいぞ。あっけにとられているうちに終わっちゃった、こんなの初めて、びっくりだわ。

「この前のアーラのコンサートではおもしろい企画があったんですよ。山下洋輔、板橋文夫、田中信正というピアニストが3人揃ったんです。山下と田中は性格が似ていて、楽しいことが大好きで、新しいものに何でも食らいついてやろうっていう感じで。山下さんに田中と2人でやり合いましょう、って言ったらそれはおもしろい、ってことになったんです。板橋はいやがると思ったんですね。『オレはいいよ(板橋さんのまね)』って言うかと思って黙っていたんですが、当日リハーサルになったら『3人でやろうよ(またまね、そっくり!)』っていうので、思惑と違ってしまったんです(うれしい予測違い)。田中山下の一騎討ちの間に私が入ってあっちとこっちでやろうと思っていたんですが、板橋が入ってきて、板橋から田中に入れ替わり、暗い中トロッコに乗ったピアノが出てきて、そこに山下が出てきてピアニスト3人でやりあったんです。あれは見物でしたね!(拍手)」客席から「森山さんスティックを高くとばされましたよね」私はメモを取っていてみられなかったのかな・・・「あれは打ち合わせだったんですよ、目立つために。つのだひろも言ってました、『ドラムはいつも後ろに坐っていてつまらない、何か目立ちたい』って、『ドラムセットをリヤカーかなんかに載せて、ドラムソロになったら前に出てくるってのはどうかな』なんて。ドラマーはみんな同じようなこと考えるんですよね。楽しいコンサートができました。あ、そういえばコンサートを記念してTシャツを作ったんですよ。ここに話を持ってくるためにここまで引っぱったわけじゃないんですけど。ドラムとピアノとサックスとベースのイラストを入れて、黒とピンクと草色っていうんですかね、黒が人気で売り切れてしまって、100枚作ったんですけれどピンクと草色10枚ずつ残ったんです。よろしかったらお買い求めください」「2枚買いました」の声、「ありがとうございます。どうしてもって言う方は1900円にしましょうか。来年も何かおもしろいことをやろうと思っています。ここへ来る前の新幹線の中で音川にどういうことをやるか、アイディアをもらいました、アコーディオンを入れて、テナーを入れて・・・って、どこかで聞いたことあるでしょ?音川のバンドですよね。何か安易だねえ!あと1年近くありますのでいろいろ考えたいと思います。ドラムを叩きながら宙に浮くってのはどうかなんて(笑)話が長くなりましたが、ラストだよね、早いよね(え〜〜)。大丈夫、アンコールあるから」「アンコール5曲!」と客席から。

タタン!サンライズ。大拍手。少しテンポがいつもより速い気がするな。レガートがかっこいいな。抑えめに吹き始める音川さん。パカンと入れる音でリズムリフを入れるノブ君。本当に流れが快い。叩きまくる森山さん、わあ、音川さんのブロウを後ろからあおるあおる。ノブソロ、森山さんがバスドラを強く踏み込んで、タムの回し討ちで曲のアタマへ。サビのリムショット、グズラさんのベースがぐいぐいと。お、森山さんぴたっとブレイクして、ノブ君とグズラさんのデュオ、森山さんつけては退き、つけては退きの繰り返しで変化をつける。森山さんロールでサビからつけていく、アタマから全開!攻めていくノブ君、サビから音川さんがつけていく、ドラムソロへ。ノブ君水を一口飲む。すごいドラムソロ、もうやめるかと思ったけれどまだ続く、ううむ、メモを取る手がとまる。すごい!音川さん1オクターブ上げて最後のテーマ。

「田中信正!音川英二!望月英明!」スティックを高く上げて「アンコ〜ル〜」と森山さん。Hush-a-bye。拍手がわく。ノブソロ、ああ、ノブ君の音、本当に「ジャズ」らしいサウンド。いろいろな要素が組み合わさって多彩なサウンドが出せる。無機的な、現代風な、伝統的な、包み込むような、破壊的な、そして優しい。音川さんソロ、森山さん歌う。何か、本当にもう終わりなの?残念、って感じ。グズラさんソロ。サビで音川さんがつけ、森山さんが歌う。テーマ、ベースの響きがいいな、雷鳴のようなロール。

「ありがとうございました。この前、9月のアーラの時はお客さんもたくさんいらっしゃることですし、車で迎えに行くのはやめようかと思ったんですが、山梨に住む84才の母親が楽しみにしているんで、無理して迎えに行ってコンサートに来てもらったんです。『おまえはいいねえ、いい仲間に囲まれて、幸せもんだねえ』涙が出そうになりました。『で、仕事は何をやってるの?』本物の涙になりそうでした。翌日、朝起きたとき『昨日はいいコンサートだったでしょう』って言ったら『誰が?え、どこへ行ったの?』何にも覚えていないんです。まあしかたがないんですが。よろしければうちの母親にもよろしくお伝えします。次はあの曲をやるよっ!」

静かに、少し不気味にノブ君のイントロ。Goodbye。じっと聞いている3人。静かにメロディーが流れ出す。マレットのロール、サビから音川さんが、ああいい音色。ブラシワーク、ノブ君のソロ、ああほんとうに浸ってしまう。

K枝先生のさしいれの豆腐と日本酒で打ち上げ。ごちそうさまでした!
さて明日は、京都から金沢へ行って恩師を偲ぶ昼食会後、夕方に関西空港へ行ってイラクに帰国するアッバース君を見送り、深夜に名古屋に戻るという長距離移動。レポートがその間に書けるかな?