ラブリーのライブの様子(森山さんの喋りは緑文字にしてあります。)

1日目は、最近定番のスタート曲“マーチ”から始まる。
先日の京都とアレンジが変わっている。音川さんのソロから田中さんのソロへ、激しいデュオバトルとなり森山ソロへ移行、この間スムースで拍手をし損ねる、次いでテーマに戻る。
森山さんの喋りが始まり、「今回はCD発売記念ということで、勝手に記念にしてしまいましたが今なら一枚1,000.-! 2曲目が始まったら定価に戻るんですけどね・・・既に皆さん1枚はお持ちだと思うんですけど、決して家族間で貸し借りをしないように、一家に1枚ではなく1人に1枚是非お持ち下さい」あっという間に2曲目が始まりCDを1000円で買えた人はいませんでした。

「次の曲はテイク・ゼロ。このCDのタイトルにもなった曲です。ただ威男(TAKEO)をばらしただけなんですけれど、ゼロからの出発だなんて大層なことがライナーノーツに書いてあって・・・ゼロからじゃいつまで経ってもゼロだろうと私は言いたい。」
曲へ突入、ベースとドラムのデュオ。リズムのリフが繰り返され、ピアノとテナーが受ける。ベースの割に長いソロが(珍しい)チョッパー風に続く。昔の「ノン・チェック」という曲のベースを思い出しました、凄い厚み。次いで音川・森山デュオ。バッキングで森山さんと田中さんが目と目を見交わし遊んでいる。森山さん実に楽しそう。森山・田中デュオ、それに音川さんがからみ、決めでテーマへ。終わって「この曲は私が作曲したんですが・・・こんな曲なら何曲でもできます」だめだよホントのこと言っちゃ。

Gratitude(井上淑彦作曲)」田中さんのソロから音川さんのソロへ、森山さんが背後で暴れまくっている。しかしブラシでドラムをこんなに叩きまくるドラマーって他にいる?

departure from mysterious flash 」このバンドのいいところは、全員が全員の演奏を真剣に聴いているところだと思う。田中さんのソロになっても、音川さんは真剣に田中さんのソロを聴いている。当たり前のように思えるかもしれないが、管楽器の奏者で、自分のソロが終わると「あー終わった」とばかりにぼーっとしていたり、煙草を吸ったりする人もいるくらいだ。今まで見た中で一番ひどかったのはT村Yピアノトリオ、ドラムソロが始まったらピアノを降りてカウンターでお客と話している!演奏中のその曲はグループの作品じゃないんかい?
ちゃんと聴いているから、森山さんの出すちょっとした合図(サンライズの、テーマに戻る時のキメの「タカタドン」のフレーズよりも短い)で全員がすぐテーマに戻れる。すばらしい。ここで休憩。

Sound River」ちょっと音響が悪くピアノの音が割れていて残念。音川さんのソロで大盛り上がり。森山ソロ、森山さんの奇声でソロが終わりテーマに。

見上げてごらん夜の星を」音川森山デュオ、一瞬リフが入るが崩しに崩れて何の曲か判らないほど。ブラシで暴れまくりブレーク、ピアノソロ前衛風。田中森山は狐と狸の化かし合いのような対決、あ、狐は音川さんか。田中さんの手つきは猫のよう。じゃ望月さんは何だ、あ、グズラか。森山ソロに入り最後のテーマでやっとタイトル曲と判る始末。この前のRAGよりずっと崩してある。望月さんは弓でテーマのバックをつけている。

その昔、私はNHKフィルの山本直純の楽団員でした。くりくり坊主頭でパーカッションを叩いていました。坂本九さんがスポットライトを浴びて立って唄って、感動したことを覚えています。その次は、高円寺の居酒屋でグズラと飲んでいたら隣のテーブルで坂本さんが4-5人で騒いでいたのを見ました。そのころは失敗続きで、NHKの録音中にパーカッションのチャイムを叩く時、片手を空けるために譜面台が必要で、楽団は演奏中だったんですがそっと譜面台を取りに行き、しめしめ間に合ったぞなんて戻ってくるとき5mくらいの高い集音マイクのコードに足をひっかけてバターンと倒しちゃった。当然演り直しで、その日は泣きながら帰りました。ギャラはちゃんと握りしめて。このとき、マイクを蹴倒そうが、シンバルを叩き割ろうが心配のないジャズドラマーになろうと思ったのかも知れません。今のこのシンバルが割れているのは(トップシンバルにシズルという金具がついていて、その金具の間で台形にシンバルが欠けている)わざとではなく、割れちゃったんです。以前、ドラムをやっている人が僕もまねしましたとシンバルを切ってきた人がいましたが・・・でもここの間から田中がよく見えていいんです。

Yamaこの曲は田中が作ったんです。も一曲、「mori」って曲もあったんですけれど、どうも気に入らなくてやめました。合わせて・・・やめましょうか。音川ソロ、田中ソロ、森山ソロからテーマに入るかと思ったら延々ドラムソロが続く。

Hush-a-bye」田中、音川、望月、森山とソロが続く。

昔、ライブをやっていると歌わせて、なんて女の子が時々来ました。しばらく経って、九州のフェニックス・ジャズ・インってところへ出演するのに、羽田で飛行機を待っていると、「もっりやっまさーん」なんてその娘がやってきた、どこへ行くの、って聞いたら九州よ、っていうからあ、じゃあ僕たちと一緒の飛行機だね、何しに行くの、って聞いたら歌うのよ、なんて。彼女はアンリ菅野っていう歌手になってました。最近彼女が亡くなったって聞きました。このごろ、いろいろな人の訃報が相次ぎ、「どうして人は死んじゃうんだろう」「なんでいい人ばっかり・・」なんて考えると・・と目を潤ませて亡くなった人の想い出話と共にGoodbyeに突入。なんだかしんみりしてしまい、反則技だあ。

いいライブでした。

二日目ライブの直前トイレで個室同士の会話。
「ねえねえライブスケジュール見た?ケイコ・リーとか向井滋春が来るんだあ、ちゃんと大物も来るんだねえ」「え、どこどこ、ホントだー。」おいおい、今日あんたら聴きに来たのは大物じゃないんかい?

今日の一曲めはyama(田中信正).おー、アプローチが違う。言っちゃ申し訳ないがいままでパターン化したライブを心がけてきた森山さんらしくない、2日間で構成を変えるとは、よっぽどの意気込みが感じられます。おおー、一曲目から飛ばしますなあ。すごいすごい。音川ソロ、田中ソロ、唖然とする!胸ドキドキ、息が苦しい。

二曲目、マーチT.M.(音川英二)のイントロが始まっても場内のざわめきがおさまらない。森山さんのすばらしいマーチング、機械のように正確というのはジャズドラムにはあまり褒め言葉にならないがこれは別。音川さんのソロにはいるといつもは4ビートばかりだがマーチのリズムも入り、また違った一面も。森山さんのソロはリムショットを多用して和太鼓の雰囲気、片手を遊ばせて片手だけで叩いているのが信じられない音の多さ。わざと音を出さずに空中で手足をバタバタさせ、遊んでウケを取る余裕もあるが、しかしアフロ風の叩き方も混じり、この人のドラミングは多種多様でしかも完璧。マーチングに戻り、テーマへ。音が小さくなると空調の音も気になるようなピアニシモから、爆発的な大音響まで、ダイナミズムの極地。

「新しいCDを出しました、ここに見本が」と1枚CDを取り出し、とくべつに1枚1000円でと、希望者の女性に本当に今日は売ってしまった。「残りは3000円です、あとで2000円儲けて下さい」今日は本当に新しい曲ばかり、今まで板橋とか、井上とかもうずっと長くやってきましたが故あって離れてしまいました、板橋は元気です、井上も元気です。板橋は本当に変わった男でした、新曲を持ってきてサビの部分なんか井上がこのところはこのコードでいいんですかね、と聞くと「夕日だよ、夕日!」なんて打ち合わせにもなりゃあしない。別れた恋人のようで気にはなってるんだけれど電話をかけるのも何だし・・・ってな調子ですが風の便りに元気だと聞いています。

Gratitiude」に続いてあっと驚く「サンライズ」。今までの曲はやらないのかと思ったら突然始まり、またみんなの盛り上がりが凄いすごい!新曲シリーズも良い曲が多いが、実は大学時代森山追っかけ+コピーバンドをやっていた筆者、もう何百回この曲を弾いたかわからないほど。何しろ私の携帯の着メロはサンライズ、大好きな曲です。思わず指と体が動いてしまい手足どたばた、後ろの席の皆さんごめんなさい。

あああああああ、今日はすごーい!いつも良いけど今日はホントに凄い!生きてて良かった・・・。

二部が始まり、Sound River(音川英二作)。この曲のタイトルは・・・説明しなくてもわかるよね。

Take Zero」今日はテーマからして違う、前置きで「ホンのちょっとしか作曲した部分がなく落語の何とかオチみたいに終わってしまうので注意」、なんて言ってたけどグズラさんのソロがトップに、その最中も森山さんのトップシンバルの微妙な動きに合わせて一瞬の隙も逃さず音川さんと田中さんがリフを入れる。この注意力とバンドのつくる緊張感がたまらない。森山田中バトル、あっと思うとそろってリフ、タイミングのばっちりさ加減は今日初めての演りかたとは思えない。

departure from mysterious flash」このバンドの現在の駄洒落タイトルシリーズ曲とは思えない長いタイトル。それもそのはず、このバンドのメンバー作ではありません。もうあまりに凄くて茫然、メモが取れない。

見上げてごらん夜の星を」また昨日ともアプローチを変えている。「私は本当に唄伴が下手で・・いろいろやったこともあるんですが、自分じゃ叩くより歌った方がましかと・・・思い入れたっぷりに叩くと後ろにつけてしまい、歌う人が後ノリだといっしょになって遅れてしまうんです。母親からも"威男、スローバラードであんなに叩かなけりゃだめかい"なんて言われますが、思い切り歌うとああなってしまうんです。」
Hush-a-bye

「このバンドもこんど月末にピットインがあります、それから・・・9月には北海道でツアーがあります。間は省略して11/3はここの30周年ライブです。皆さんお越し下さい。皆拍手。その他詳しいスケジュールは個人的にお問い合わせ下さい、望月がお答えします。」Good-bye」と続いて終了。

皆興奮さめやらぬ顔。ライブの出来は近来まれにみる良さ。今回このバンドを初めて聴く人間を何人か同行したのですが、ジャズの素人の同僚も「こんなの聴くと生きててよかったって思うよなあ、俺も追っかけしようかな」ですと。「音川さんいい顔になってきたわよね、前はキツネ顔だったけど音も良くなってきたし」とあるご婦人。

打ち上げの席でも森山さん上機嫌。こんなに楽しそうにしている森山さんを見るとこちらも嬉しい。このバンドは本当に世界一だと思う。最初遠慮がちだった田中さん、音川さんもどんどん自己主張ができるようになってきて、回を重ねる事に良くなっていく。今後スケジュールがけっこうあって、森山ライブを聴けるチャンスが増えてきた。今脂がのっているこのバンド、こんなにぐちゃぐちゃと長く書いてあるのを見るだけでなく、是非ライブに出かけて感動を共有しましょう。