初日。集中豪雨のため中央線が遅れ、少々あせって鶴舞駅から名古屋駅へ向かう。降りるとき、日傘の柄が開いたドアに挟まって抜けなくなり、身動きとれず、周囲の人が引っ張ってくれたら持ち手がとれてしまった。助けようとしてくれた男の人の折り畳み傘がホームに落ちてしまった。新幹線の時間が迫っていたのでその男性を残して立ち去るはめに。かえって申し訳ないことに...。

新宿駅から歩いてピットインへ向かう。待ち合わせてH岡君とH條さんと一緒にピットインのあるビルの2階のタイ料理店「クルンタイ」へ。ここはお薦め。辛ーいカレーとかトムヤムクンを食べ、汗だくだく、気分もホットに。開場予定時間の7時にピットイン前へ行くと、異様に暑い。森山さんがコーヒーカップ片手に出ていらっしゃった。どうも空調が壊れて中はサウナ状態らしい。人が入ったらなおさら暑くなるので、入場時間を遅らせて空調修理にかかるとのこと。冷房の効いていないピットインで、ほぼ満員の客で、森山グループが演奏をしたらどんな状況になるのか考えるだけで空恐ろしい。入場は7時半からとなり、私は森山さんの今後のスケジュールを書いたチラシをコピーにでかけた。ホームページでスケジュールを書いていても、ホームページの存在をご存知ない方や、ホームページを見られない方もいらっしゃいますもんね。

さて、開演。メンバー登場、やはりスタートはマーチング・オブ・セブンス。森山さんのイントロのソロ、よく響く。あれ、スネア新調のものかな。ピアノソロ、今日のセッティングは田中さんの顔が観客席からまともにみえるようになっていて、表情がよく見える。森山さんの方を見ながらタイミングを伺い、測り、田中さんの方からドラムに仕掛けていく。オールバックにした髪の毛が額にはらりと下がり、振り乱しながらピアノを弾く表情はセクシー(?)と言っていいのかどうかよく分からないが、女性ファンが増えそうな感じではある。おお盛り上がる音川ソロ。今日は昼の部もピットインに出演していた音川さん、昼夜続けて大変ですね。いきなり吹きまくりで、森山さんがバックであおる。森山ソロ、もう終わるかと思ったのにまだまだ続く。マーチに戻り、音大小ののコントロール絶妙。これぞダイナミズム。爆音と最小の音のメリハリがすごい。テーマ、バシッと切って終わる。

すかさずSun, be motionless. テーマから音川ソロへ。カデンツァのバックで森山さんの奇声が飛ぶ。吹きまくるサックスのバックに望月さんのベースラインがうねりを作り、森山さんがたたき出すこのドライブ感がたまらない。客席から優しく嬉しそうに夫を見つめるnorikoさんの目・・・と思ったらどうも視線の先は田中さんのようである(!?)。田中ソロ。拳で叩く鍵盤、おおお、見交わす目と目、森山vs.田中!苦しそうな表情がまた何とも。森山ソロ炸裂し短めに終わる。森山さんソロを見つめるメンバーピアノとベースが入り、テーマに戻る。音川さんが縦横無尽に吹きまくるテーマ。

ありがとうございます、とメンバー紹介。はー、はー、と肩で息をする森山さん。喋りを皆期待していて、くすくす笑い出す。お疲れ!と客席から声が飛ぶ。鼻息だけ聞いていてもしょうがないんですが。えー、実にほぼ3ヶ月ぶりで、このグループで演奏します。このグループでったって、他のグループでやってるわけじゃないんで、このグループで3ヶ月ぶりってことはドラムの前に座るのが3ヶ月ぶりってことで(ジュニアマンスとの共演がスタジオFであったが、あれはドラムを叩いたうちにはいらないのである)どうなることかと思いましたがまあまあ終わってしまえばこっちのもんです。ヒマな時間何をしてるかっていうと、多治見っていうところに住んでますんで、多治見はだいたい夜9時をすぎると飲食店は全部やっていません。山のなかにばっかりいるわけにも行かないんで、普段は緑に囲まれていいところに引っ越してきてよかったなあなんて思っているんですが、2ヶ月に1回、1ヶ月に1回くらいは里が恋しくなるんです。電車に乗って名古屋まで出かけるわけですけれど、根が好きなもんですから、誰か演奏しているとおだてられて、1曲くらい叩いてしまうんですがそれまで飲んでいたのが全部汗になってなくなるので、あとから継ぎ足して結局は帰る頃になるとぎりぎり終電に間に合うかどうか。田舎で、名古屋発の多治見までの終電は11時半くらいなんです。だからラブリーで叩いてちょっとそのあとビールでも飲んで帰ろうかっていうと、危なくなるわけで。ついこの間も1杯飲んで時間を見たらもう終電になるので、急いで帰りました。折りがよく、特急がちょうど停まったところで、千種駅ってところから乗るんですけれど、特急へ飛び乗って、次は多治見っていうんでよかったよかった。特急料金だけであんなに短いのに800円も取るんですけれど、まあでも長旅をするような気分で、一杯飲んだ後はいいもんです、汽車の旅。最初10分くらいは起きているんですけれど、やっぱり疲れて寝てしまいまして、はっと気がついたら木曽福島!長野まで来ちゃって・・・。長野まで来るつもりはなかったんですけれど、車掌さんに聞いて、「木曽福島って所は旅館とかあるでしょうか」「夜中ですからねえ、もうないでしょうね」「じゃあどうやって帰ったらいいんでしょうか」「急げば、ちょうどついたホームの反対側に上り電車、特急が来ますから。それは着く時間と発車する時間が一緒なので急いで飛び乗ってください」ホームは同じホームなので大丈夫だろうと思って、待ちかまえて開いたとたんに走っていってほいっと飛び乗って乗れたんです。良かったなあと思って、家へ携帯で電話してこういう訳でちょっと遅くなっちゃった、って言ったら夜中なのに電話口でみんなでわあわあわあわあ面白がって大騒ぎしているんです。で、もうちょっとしたら帰るから、って言ったんですけれど、その特急は多治見に停まらない。(爆笑)名古屋とその次は大阪だっていうんで、こんど名古屋を乗り越しちゃたまらないってもう名古屋近くなったら立ってました。起きてましたけどね。で、一番の6時20分中津川行きっていうので帰ってきましたが、えらい長旅でした(ステージ上のメンバーも爆笑)。そんなことが田舎にいるとあるんですけれど。まあ、でも楽しい思い出です。そんなわけで(どんなわけだ)次の曲はGratitude.井上淑彦の名曲です。

好きだなあ、この曲。聴いていると、ステージからの音で、指の先から何かが体の中にしみこんでくるような気がする。ゆっくり腕に鳥肌が立っていく。胸が切なくなって、ゆっくり目頭が熱くなっていく。ピアノの高音部の調律がちょっと気になるけれど・・・。終わりのテーマ、ブラシで暴れる森山さんを見て最前列のカップルが笑っている。そりゃあそうだ、初めて見る人は唖然としてついでに笑うというのが定番。ハウリングが多いのが残念。しかしテーマが終わって、しーんとした場内、拍手とため息。

Free people.テーマから田中ソロへ。アフロリズム、目で合図して4ビートへ。おおいいぞ、びしばしとバックからあおる森山さん、田中さんの音と望月さんの音とが絡み合って一塊になって、何か目で見えるもののような、実体のある物のような存在感。音川ソロもまたばりばりと、これでもかこれでもかとお互いがお互いを挑発して高めあっていく。もー、すばらしい。森山ソロ短めにキメ、テーマ。終わった後、拍手鳴りやまず。メンバー紹介、「しばらく休憩します」観客席拍手の嵐。皆しばらく無言、「はー」「ほー」とため息をついた後、「すごいねー」「でしょー」などの言葉が飛び交う。

さあ二部だ。Sound river.音川さんの作った曲。田中さんのソロから。森山さんのスネアが爆音をたてている。ちょっとしか動いていない手首なのに、どうしてこんなにいい音が出るのかな。動きにむだがなく、効果的に音に変換されているのだろうが、本当に一人で叩いているのかと思うような音の嵐。弾きまくっているのに美しいメロディーがピアノからきこえてくる。ベースの流れがドラムの爆音とピアノの音階の間をぴったりつないで一本芯が入った太い幹のようなまとまりを作る。音川ソロ、キュキュキュキュキューと盛り上がるところでピアノもガシガシ。手が切れてないかと、余分な心配。うううー、すごい。ドラムソロ、コンパクトに。テーマが終わる直前、森山さんの左手からスティックがぽろり。手を高くあげていたので持ち替える時間はなさそう、どうするかと一瞬思ったが、右手を大きく回してシンバルをバシーッ。決まったー。拍手ー。

メンバー紹介。この前テレビを見てたら、僕ぐらいの年のお父さんが、お弁当を持ってケーブルの点検の仕事をするというのをニュースみたいにしてやっていたんですけれど、子どもがそれを見ていて、「すごいなあ、命綱つけて、あんな仕事をしている、すごいあのひとはすごい」って言うんで、それを見ながら俺も命綱つけてドラムを叩いてみようかと思いました。爆笑、大受け、拍手・・森山さん、お嬢さんに「お父さんすごい」って言ってもらいたいんだよね。さおりちゃん、あなたのお父さんはすごい人ですよ。・・ポンタ、一人で受けてんじゃないか!(客席にPonta boxの村上ポンタ秀一さんと佐山雅弘さんがいらした)娘がこのごろおかしいんですよ。ふっとしたときに、変なことを言うんです。「お父さん」「何だ」って言ったら、「いろいろ考えたけど、世の中甘いね」何を言っているんだろう、私を見ていっているのかどうかわかりませんが。そんなわけで、ダニーボーイです。(爆)うー、一部も二部も笑いをとってからバラード。音川さん、吹きにくくない?

バラード、音川さん一人のテーマから。美しくテーマが終わると、静かにドラムとピアノのデュオが始まる。ゆっくりとお互いを見ながら、少しずつボリュームが上がっていく。わあー。ブレイクもびしっときまり、ゾクゾクッ!ぎゃんぎゃんにデュオで対決、終わりのテーマはほんのほんの小さな音で柔らかく決めておしまい、この対比が何ともはや。客席大受け、初めて聴く人はびっくりだろう。拍手の中「うわー」「すごいねえー」「ひえー」との声が聞こえる。

ン、ン、と森山さんが口でカウントを出し、Departure from the mysterious flashが始まる。アップテンポのタイトな曲。音川ソロ、すごい、すごい、すばらしすぎる。もう唖然、メモを取る手が止まってしまう、ああどうしよう、ふなさんのいう「管理人さんトランス状態」に入ってしまった。きゃあー。手足ばたばた、頭ふりふりでのめりこんでしまう。お、ピアノとベースとのデュオ、力強い音!わくわくどきどき、もう胸ばくばく。ドラムが入り、そのままドラムソロへ。感激です。もう、もう、もう、レポートのことは一瞬忘れました。

ありがとうございました。メンバー紹介。望月さんの紹介の前に一瞬間が空き、客席から笑いが。

おや、サンライズだ。音川ソロ。それ行けー。やれーやれー!田中ソロ、リフを入れるところのタイミングとメロディーがばっちり、音の嵐、興奮の渦、ステージと客席が一体になっている。森山ソロ、受けねらいでわざわざ手足をおもしろく動かしながらソロで笑いを取る余裕がまだある。タン!とテーマに。ああ、すばらしい。

ありがとうございました。とメンバー紹介。田舎に帰って普通のおじさんになろうかと思っていたんですが、多治見市でやってくれって言うのを皮切りに、最初は50人くらいの公民館でやったんですよ、小学校の先生に頼まれて。そうしたらその次は200人くらいのホールになって、今度は可児市の福祉センターという800人くらいはいるホールでやることになりました。このグループと、ジョージ・ガゾーンというグループの人たちが加わって、グループの曲とそれからごちゃまぜにジャムセッションみたいにやろうと思っています。遠いんですが、ぜひいらしてください(客席笑い・・でも皆さん本当に聴きに来てください)。お暇な方は行き帰りウチによっていただければお茶ぐらいさしあげます(うんうんとうなずく人あり)。それがもし800人はいらなくても700人くらい入ると、可児市で来年1400人くらいのホールができるんで、そこでやりましょうって言われているんで、何とかならないものかと、今日来ていただいた方にはなんとか来ていただけないものかと。9月の22日土曜日、可児市までどうぞいらしてください。えー、それからtake 0と信正見参という二つのレコードを今日持ってきました。・・まさか売れるとは思っていませんけれど。・・売れなくても、持っていこうというこの気持ちを買ってください(爆笑、拍手)。

美しく、ソロからグッドバイが。静かな場内。咳払いをする人もいない、空調の音まで聞こえるほど。今日は向かいのゲイクラブの音がうるさくなくて良かった。毎度ながら、このバンドってどうしてこんなに、すごい曲はすごく、美しい曲は徹底的に美しくできるんだろう。心酔してしまいます。ほおー。

拍手がなりやまない。アンコールだ。森山さん出てきて、「やろうにももう曲がないんです。本当はやりたいんです。本当に練習します。この次には坂本冬美の暴れ太鼓を一曲。・・・北海道でも言ってたなあ、たしか。本当に歌いたいんじゃ?田中さん、伴奏つけたら本当に歌うかもしれないよ?・・・ポンタさん、久しぶりですね。いつぞやは京都で、兄貴のように立てていただいて、ありがとうございました。あれ以来、すっかりいい気分でやっております。お変わりありませんか?ぜひまた明日も、いらしてください。私も必ず来ます(爆笑、拍手)。ありがとうございました。拍手、歓声。

「ホームページ毎週必ず見てます」と最前列に座っていた男性に声をかけられる。「すばらしい」とお褒め下さった。うれしいよお。張り合いが出ます。皆さんも、励ましのお声かけと書き込みをよろしくお願いします。

(左)佐山雅弘さんと田中さん

(右)森山さんと村上ポンタさん

二日目レポートへ