今日は少し森山さんが来るのが遅くなるので、禁を破って(自分の中の、ね)早めに店内に入り、シンバルのセッティングをする。左右は間違っていないと思うが、ハイハットの下がうまくおさまらず、一瞬???あとは微妙な位置と高さだな、ねじの締め方もまだよく力加減が分からない。7時5分前に外に出て席を見つけて座る。あっという間にピットインの前は人がいっぱい。今日は寒いので冷えないようにとお腹と両方の太腿にカイロを貼っているがそれでも足許は寒いなあ。下の写真は本番前にドラムのチェックをする森山さん。

8時スタート。Marching of seventh。一瞬テンポがいつもより遅いかと思ったが、そんなこともなさそう。田中ソロ。ああ、すごい、一日目もすごいと思ったけれど、一曲目から胸が締め付けられるような、苦しくなってしまうような演奏。場内に緊迫感が漂う。こんなに叩いて大丈夫?と心配になってきた。

Sun, be motionless。あ、森山さんテーマの終わりで腕を上下に大きく開いてシンバルワーク。かっこいいなあ。今日はノブ君昨日より背中が伸びているわ。顔がよく見える。森山さん背後から音川さんを見据えて。ああワクワク、この曲のサビの部分のサウンドが大好き。すごい。何だか涙が出てくる。ピアノソロの途中で森山さんブレイク。ベースとのデュオからドラム入り、だんだん音量をアップ。すごいぞ、なんだか涙が出てきた。もうー、何というのかなあ、聴いているこっちも力が入って曲が終わると脱力、グッタリーって感じ。

ありがとうございます、テナーサックス音川英二!ベース望月英明!ピアノ田中信正!とメンバー紹介。何をしゃべるのかと思ったらそのまま森山さんが田中さんを見てうなずき、Gratitudeのイントロに入る。MC最短記録だな。田中さんのバックで望月さんがベースの弦を左手で軽く押さえたり放したりしながら、小さな音を出している。かすかな音なんだけれど、これもバッキング、ピアノの音に彩りを添えている。うーむシブイ。ほう〜っと、ため息が出る。胸の奥まで染みわたるサウンド。

ノブ君の顔、後ろに体が反ると暗いし、うつむくと見えないし、ちっとも撮影できない〜〜〜。その上ピアノの上にタオルかなんかが載っていてじゃま。

Free People。アフロリズムのピアノソロ、田中さんが森山さんを見て、4ビートに。森山さんがスカッと音を切ってメリハリをつける。ああ、苦しげなノブ君、森山さん楽しそうにニヤッと笑い、イヤーと叫ぶ。何だかサドマゾの世界みたい。もう討ち合い、果たし合いをしているかのようだ。バシバシと二人でリズムを決めて、打てば応えるこの呼応性がみごと。音川ソロへ。トップシンバルのてっぺん、中央を叩いて高音でアフロリズムを刻む。森山さん叩きまくり、音川さんのバックで暴れる暴れる。もう、ドラムソロかいなー、これは。こら田中休むな、いっしょにあおれ!森山ソロへ。マレットに持ち替えタイコ風に(ドラムも太鼓だが)音階をつけて叩く。アフリカン? あれ?入るのかと思ったがまだ続く。マレットからスティックに持ち替える時に奇声が飛ぶ。もう、そこまでやらなくていいよ。やめて〜、今日は寝不足で体調が悪いのじゃなかった?もう、心配になって来ちゃう。すごいよ、すごい。

休憩なのに、もう・・体が動かせない。声も出ない。しびれちゃう。いつの間にか涙が出ている。昨日だけしか聴けなかった人、それから今日来られなかった人、ごめんなさい。くやしいだろうからこの続きは読まなくてイイよ。こうやってレポートを書いていてもまた涙が出てくる。いつもすごいけど、今日はもう抜群のライブ。どうしよう、衝撃からまだ立ち直れない。後ろからみんなの感嘆の声が口々にあがっているのが聞こえる。「凄い!」「人間じゃないよ、あれは。」「怪物ってやつ?」「えー、何なの、これ!」「すごーい!」言葉にならず、「ほおーっ」「はあーっ」とのため息もあちこちから、ざわめきになっている。これこそ芸術、感動。手が震えて力が入らない。脱力して席を立てない。いったい何なんだ?

今日は休憩の間に、森山さんが出てきてサインいりドラムヘッド争奪大じゃんけん大会。左の席のかたまり、前方部分の男性だけ7人で。なかなか決まらない。右の列は女性だけで、これは一発で決まり。端の方は森山さんが言う前にもうじゃんけんをすませてもらう人が決まっていた。後ろのかたまりには音川さんも参加、最後に残った二人がじゃんけんをしようとしたら「そこは夫婦でしょう、どっちがもらっても同じじゃない」で男性の方が前までドラムヘッドを取りに。「今日は気分がいいからもっとプレゼントしちゃう」とごそごそケースの中をひっかきまわす。「何だろう」「光ってるぞ」「あっ、CDだ」客席から口々に。森山さん「スイングジャーナルから賞をいただきまして、南里文雄賞という・・このCDも賞をいただいたものなんです、何だっけ・・・・」「レコード大賞!」と客席から声が。大受け。「日本ジャズ賞と、文化庁の芸術祭賞というのをいただいたCDですが、これを一番遠くから来た人に差し上げます」あちこちから「愛媛!」「高松!」「釧路!」と地名があがる。「釧路?!」と男性がゲットしそうになったが、周りから「(ドラムヘッドを)もうもらってるからダメ〜」との声があがり、高松の女性がゲット。「ありがとうございました、また頑張ります」とひっこむ。

おや、けっこう早くメンバーが出てきた。森山さん、音川さん、グズラさんが定位置に。森山さんがハイハットを踏んで調節。始まっちゃう!隣のH条さんがまだトイレから戻っていない。彼の録音機材はプロ用なので録音ボタンの位置が分からない。どうしようと思ったら、「まだ田中さんがトイレにいるから大丈夫、始まらないよ」と戻ってきた。そういえば田中さんがいない。森山さん「誰かピアノ弾ける人いないかな?」音川さんが私を指さす、バカな事言わないで〜。田中さんがトイレから走って戻ってくる。「まあまあそうあせらなくても」森山さん。

おや第一曲目、Giant setpsだ。なんだかニコニコしてしまう。展開が原曲と違うのだろうか?とっても広がりがある。音川さんのアレンジとのことだけれど。わくわく、さっきまで締めつけられていて苦しかった胸が、ふわあっと楽になっていく。なんだか気球にでも乗っているように、上昇していくような感じ。音川さんのソロのキュウーっとのびる最後のハイトーン、一緒にキャーっと叫びたくなっちゃう。わーお、行け行けー、やれえー。ベースの音がびりびりと伝わってくる。おや、まだやる?ノブ君森山さんを見て、目と目を見交わして、森山さんこれでもかこれでもかとあおる。やれーやれーやれー。胸がばくばくいっている。あー、誰がなんと言おうとこのグループが絶対世界最高だよ!! 昨日森山さんがライブの後で言っていたせりふ「俺はコルトレーンミュージックがやりたいんじゃない。コルトレーンを追っかけても、コルトレーンは越えられないんだ。俺はね、コルトレーンが生きていたら、”しまった、やられたー”っていう音楽がやりたいんだよ。」なんてかっこいいんだと思ったけれど、きっとコルトレーンが聴いていたら「しまった、やられた」って言うんじゃないかなあ。あれ、テーマに戻るかとおもったがまだドラムソロが続く。

今日は森山さんの口の動きでわかった、In a sentimental mood。「むせび泣くサックス」なんて言葉は死んでも使いたくないフレーズだけれど、それこそセンチメンタルな、ちょっと哀調をおびたサックスのトーン。うーん、ちょっと高音のピアノの響きが気にかかる。あふ、ノドのえへん虫が騒いでいる、咳をしたいのにこの曲の最中にするとちょっと響いて周りの迷惑になるので氷をなめてがまん、苦しい〜。明日はきっと向井さんがテーマを吹くのだろうな。

ああ、うまく写真がとれない。動画でも多分暗くてうまくいかないのでは。ストレスだわ。下の写真が、一番良く撮れた田中さんの写真(これで!)。明るくしてくれ!

Sound River。ピアノソロ、田中さんの顔がだんだん紅潮してくるのがわかる。わーわあ、わー、このバトル何と言ったらいいの?田中さんの手、切れてないかい?望月さんが後ろから重厚な音で深みを添えている。森山さんが田中さんを見つめるまなざし、時には父親のように優しく、時には獲物を狙う鷹のように。音川さんのソロのフレーズは至上の愛?森山さんのスティックが飛ぶ、何なの、いったいこのサウンドは。今日が以前のハイハットだったらきっとおちょこになっていたなあと思う。

テナーサックス音川英二!ベース望月英明!ピアノ田中信正!えー、早いものでもうあと1週間で57才になってしまいます。拍手。昔、山下洋輔が泣きそうな顔で家に電話をしてきて(テレビ電話ですか?)、「おーい、困ったよ」って。「どうしたの」って言ったら「40になっちゃったよ」「そりゃほっときゃなるよ」って(ほっとかなくてもなると思うんですけど、ならない方法ってあるんですか?揚げ足ばっかりとってどうする)。でも山下洋輔が40になったのは驚きゃしなかったんですけれど、自分が57かあ、って。昔つっぱってましたから、57にもなって人前でドラムを叩いている人を見たら、オジイのくせに何やってんだ、ってさんざん悪口言ってたんです。誰か言ってんじゃないですか?と客席を指さしながら見渡す。暮れから正月にかけて、うちのおかあちゃんが、甲府で、84才になるんですけれど、1人暮らししています。子どものやっかいになりたくないと言って。ぴんぴんしているんですよ、歩くのなんて私より早いくらい。デパートなんて歩いていると一日中でも歩いてるくらい元気なんです。朝も、毎朝1時間くらい散歩しているし、ごはんも3食3食自分で作って食べますし、家の中も、庭も、全くきれいにしていて一人で住んでいます。ただ一つ、やっぱり年をとると、ぼけではないんですけれど、忘れっぽくなるんですね。一人で中央線に乗って多治見まで来てもらうわけにいかないので、私が中央高速で車で甲府まで行って、そして多治見まで迎えに行くんです。迎えに行って、車に乗ってしばらく走ると、「それで、どこへ行くの?」って言うから、「ああ、私の家に行くんですよ」って答えると、「ああ、そりゃあいいねえ」しばらく走っていると、「それで、甲府へ帰るの?」「いや、岐阜へ行くんだよ」「ああ、そりゃあいいねえ」しばらく走っていると「それでどこへ行くの?」まあ、あきらめて何度でも答えてやるのが親切だと思って、暮れから正月にかけてはいろんな事を念押しする習慣がつきました。で、少しわすれっぽくなってぼけているのかと思うと、そういうわけじゃないんですね。「お前はそれで、何をして食べているの?」爆笑。「ドラムを叩いているんですよ」「そんなの叩いて食べられるの?」大爆笑。「ああ食べられていますよ」それでそういうことを何度でも聞くんです。よほど心配なんでしょうかね。それでも最後にこんな事を言うんです。「お前は昔からダメだから。お前は努力しないから。何でもいいとこ取りで、楽だけしてイイ思いをしようと思っている」なんだ、結局わかってるんじゃないか。まさにその通りでございまして、今年一年も楽をして生活しようと思っています。とにかく演奏する時は思いっきり楽しんで、終わったら反省会は一切せずに、次にやる時ゃ前やったことも何も忘れて、また赤ちゃんのようにわっと言えばばっと笑う、そういう大人になりたいと思っています。もう何度かお話ししましたが、ドラマーになるのも、芸大を卒業するのも、全部あきらめて泣いた日の歌です。Danny Boy。

Sunrise、Hush-a byeあたりに行ってエンディングかと思ったら、DannyBoyが始まった。あれ?さては次にSunriseでアンコールにグッドバイかな。田中さんいきなり現代音楽調の不思議な感じの音。

Sunrise。音川さんソロ。テーマの最後のメロディーラインを田中さんが弾いて、ブレイク。ベースとサックスのデュオ。いつも、だんだん後半になるとメモを取る手が止まってしまう。音川さんのキュウーキューキューっと言う音、足蹴りが入る、のけぞってソロ終わり。田中ソロ、フレーズに望月さんもつけて。望月さんのベースがまた田中さんとのデュオになってまたすごい、カッカッという、左手で弦を押さえて出てくる音が、右手で弦を弾いて出てくる音の間に入って厚みを増す。ターンターンタッタッタッタとリズムで田中さんが鍵盤を叩き、望月さんがバシバシと弦を叩き付けるように弾く、リズムに合わせて森山さんが戻る。もう言葉がみつからない、何と表現しよう、スピーディーな、みんなで疾走しているような、ああ。ぼーっとなってしまう、音にのぼせてしまったようだ。森山ソロ爆発、縦横無尽に動く手足。森山さん小さな音、バシ!! とテーマに戻る。すごい、テーマに戻る合図がどんどん短くなっていく。タタン!でなくてタン!だけになった。

「ありがとうございます、田中信正!望月英明!音川英二!歓声、拍手。今回は明日ももう一回あります。明日は、ゲストに向井滋春と、本多俊之と入ってもらいます。もし、明日も皆さんが来てくださるなら、私も必ず来ます。」どんなサービスをするのかと思ったら、何じゃそりゃ。うー、ここで退場しないと・・もう一曲やらなきゃいけなくなるよ、昨日アンコールやるって言ったし。

森山さん頷き、Goodbye。あー、美しい・・・・もう涙が止まらない。切ない。

ありがとうございました。あの、同じ事を同じようにやっているんですけれど、バカの一つ覚えだって、子どもの頃おかあちゃんに言われたんですけれど、ずうっと同じ事を続けています。元気でいたら、また、やります拍手。

もうどうしていいのかわからない。感動なんて言葉じゃ伝えられない。歩いていてもよろけてしまう。パンチをくらった後ってこんなかな、くらくらして立っていられない。しばらく余韻が残ってしまって、ふらふら。いつも、いつでもすごい演奏だと思っていたけれど、本当によかった。ああー、すばらしい。何て感動。大事な宝物をもらった気がする。

終わってからはサイン責め。今日初めて聞いたという人、感動で目をうるうるさせている人、上気した顔でおずおずと近づいてくる人。著作権協会からの取材の写真家の人が来ている。何枚か取るうち、だんだん森山さんふざけた顔になっていく・・それが使われたらどうするの?

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