前夜のイラクでの日本人拘束がきっかけで、名古屋大学で研修中のイラク人ドクターが本日緊急会見をしたいと言いだし、その準備でてんてこまい。なにしろ、現在白血病治療中のアッバース君、ドクターたちの来日直前、出発まで力を貸してくださった高遠さんが人質になっているのだから。

午前中の診察が終わったらうちに戻って支度してでかければ充分間に合うな、なんて思っていたのだけれど、とんでもなかった。出かける準備、スケジュール印刷ぐらい前日にすませておけばもっと早く出られたのに、バカな奴。慌てて自転車をかっ飛ばして一旦家に戻り、スケジュール表を修正してプリンタを稼働し、即座に大学病院に戻る。地元テレビ、新聞なども来ている会見の司会をするはめになり、終了は午後4時。その後当局から少々お目玉をもらって自宅に帰り、マイクを探してお泊まり支度、MDやメモノートをカバンに詰め込み、乗れた新幹線は午後6時近く。桜木町地下鉄駅でちょっと迷ってしまった。今まではJRでしか移動したことがないから・・・。

午後8時にドルフィーに着くと、もう始まってしまっている、音川さんのソロが聞こえてくる。う〜。気がついたらMD本体を忘れてきた。もう今日はメモだけ。このソロはインプレッションズだな、ということはまだ始まったばかり。よかった。でも桜木町で迷わなければ間に合ったかも。森山さんのドラミングが充分スピードもあり、よしよし。入り口あたり、ピアノの音がこもっているが客席はどうだろう。ノブ君が頑張って弾いているのがよくわかる。中は熱気で暑〜い。森山さんもドラムを叩きながら袖で汗を拭く。ノブ君、森山さんの方を見上げて森山ソロへ。スティックが飛んだ、汗だくのソロ、ああ終わりのテーマ、ちょっと合わないところアリ。席を取っておいてくださったところにすべり込む。

Tシャツでよかったくらいだ、暑い。ワルツ、アフロブルー。音川さんのソプラノ、音がきれいだ。模様入りの黒Tシャツ。ノブソロへ。ノブ君、今日は少し背中丸いよ。音のバランスはどうもイマイチ。ノブ君の細い指が鍵盤上を走り回るのがよく見える。ソプラノソロに移行。グズラさんも汗が目にしみているみたい。あれ、トップシンバルが以前の欠けシンバルだ。多分、音がこちらの方が柔らかめなので、ハコのキャパとか響きを考えての選択かな。音川ソロノンブレスで吹きまくる。音川ソロから終わりのテーマにスムーズに移行。・・・・・ふー。とため息。

「ふー。」森山さんため息一つ、汗を拭いてMCなくバラードに。

あー、曲の名前が出てこない。I want talk about youだったかな?ノブソロ。だれか、携帯で写真を撮ったかしらん、そんな音が後ろから響いてきた。しばらくピアノとベースのデュオ。森山さん汗を拭いて一息つき、ブラシでスネアをかき回す。ノブ君のソロ、メロディーがきれい。本当にテンポ、走らなくなった、安心して聴ける。音川ソロへ。森山さんがスティックに持ち替える。硬軟大小の音取り混ぜ、バッキングすらきらめいて聞こえる。音川カデンツァー。

またMCないの?ってところで・・・MCマイク探しているみたい。「紹介でもしますか」MCマイク見つからず、スピーカーに口を付けてしゃべる真似。「望月英明、田中信正、音川英二です。えー、3曲コルトレーンの曲ですよね、・・・違う? (曲名を)言うまでもないですよね。 ・・・何だっけ? Impressions、Afro Blue、I want talk about youです。えー、それで今度の曲はコルトレーンじゃなくて音川の作りました曲で、Sound Riverです」

いきなりタムの音で炸裂。ノブソロからはいる。写真を撮ろうと思ったけれど、暗くてだめだわ、今日はMDからの起こしも、画像も無しのレポート。森山さんのMCも少ないし、楽かも。倍テンに変わる。う〜、バランス、やはりピアノが今ひとつ弱い。ノブ君の右手のメロディーパターンの繰り返しに森山さん反応して繰り出すパンチ。やっと森山さん攻めに転じたか、ノッて来た感じ。わー、地響き、グズラさんの響きもガンガンヒートアップ、音川さんもつけてバンドのサウンドが一体となって急上昇。そこでノブ君退いたがもう1コーラスくらい粘ってくれても、なんて欲張りか。音川ソロ、グズラさん盛り上げる、森山さん暴れまくる、うわ、すごい。森山さんの腕のしなり、カーブ、放物線を描くスティック、なんて美しい。スティックが飛ぶが慌てる様子もなく悠然と左手で右側にあるスティックケースからスティックを取り出す、その間も右手両足は鳴りっぱなし。バシーッと決まってテーマに戻る、終わって拍手!みんな大喜び。

「しばらく休憩します」

今日は森山バンド久しぶりの横浜登場とあって(前回ドルフィーは音川バンドでした)、お初に顔を拝見する人多数。レポートを配って回ると、この勝手気ままな私的レポートに目を通してくださっている方も多く、暖かい声をかけてくださる。ありがとうございます。グズラさんの学生時代の同級生という女性の方にもお会いした、昔は「モッチー」というあだ名で呼ばれていたらしいが、かわいいじゃないですか。ああ、そのころはおひげも無かったでしょうし、そのころのグズラさんのお顔を見てみたいものです。

2nd set、「何やるんだっけ?」・・・・・・音川さん、譜面を取りに控室に戻る。望月さんに譜面を渡す、「見えるの?」そうだよね、暗いし。

ンタッタ、ンタッタとNew and Old Wonderが始まる。あ、そりゃ譜面がいるわ。だってこのバンドでこの曲演るのは何回目?森山さんはまだ音川バンドでライブもレコーディングもやってるけど、望月さんはそんなにはライブ回数がないはず。このバンドでは北海道ツアーとピットインぐらいでしょう。今日のドラムヘッドにはカンニングは書いてないはず、大丈夫かな、おお大丈夫だった、決まった。ノブソロから、この曲の展開は終わりの四小節の展開がとても好き。ノブ君パワーショベル奏法、手のひらのプレス、キツツキ奏法、多種多様の奏法を繰り出す。それに対して森山さんも反応してパンチを繰り出す、あ〜どっちも見たい、魚眼レンズが欲しい。音川ソロ、他の曲のソロが劣るというわけではないが、サウンド・リバーといい、この曲といい、自分の曲だと本当に生き生きするなあ。ああ、来た来た、全員の勢いが一つになって走り、音川ソロの終わりに向けて上昇していく。ハイハットの連発、うわー、タムもスネアもシンバルもバスドラムも、すべてのinstrumentsが無駄なく余すところなく一斉に鳴っているようだ。わー、ロール炸裂。回し打ちからバシーッと決まってテーマ終わりも一瞬心配したけれど、決まった〜。大歓声。

「え〜、このセットの最初の曲は名前はまだないんです(笑)」「あるよ〜」と客席から。「作者から紹介します」と音川さんに振る。音川さん「New and Old Wonder」「そんなに難しくないんですけれど、一旦自分で難しいと思ってしまうと発音できなくなってしまうんです。New and ・・・そういう曲です。 次の曲は井上淑彦が作曲した曲で、ここのドルフィーでも名曲として何度も演奏されていると思います。私はこの曲が大好きで、井上の曲だというよりも、私が書いたつもりになっております、その頃を思い出します。Gratitude

明日もやる・・かな・・・よね・・・。テーマから。んん、ノブソロ。ベースとのデュオ、サビから音川さんが小さくつけて、森山さんもマレットでシズルを小さく鳴らして・・・少々調律が気になるが美しいメロディー・・・・音川ソロに入る、ん〜、いい感じ。フレージングもいいし。ふうっと心が解放されるような気持ち、うっとりとひたっていたら、わあ、やっぱり来た来た、森山さんただのバラードじゃ絶対終わらせないんだよね、これ。本当にここまでやらなきゃだめなの?っていうくらい暴れ回ってまあ。テーマ後半に入ると少しおとなしくなる、そしてすうっと静かに美しく終わる、このコントラスト、すごいわ。

「次は、板橋文夫の作りましたサンライズです。板橋文夫とも5月にここでやることになっています。そういう時があるんでしょうかね。8年から10年も経ってしまうと、昔の人とまたやってみたいと思うんでしょうか。私がやってみたいだけじゃなくて、井上とか板橋もやってみたいと思ってくれているんでしょうか。それとも、今こそ目にもの見せてやると思っているんでしょうか(爆笑)。明日も、5月も楽しみです」

ああ、このタイトなリズムが好き。いつもいつもわくわくする。このサビに行くところの森山さんの盛り上げ方、ドラミング!メリハリがきいていて、ぞくぞくする。インプレッションズと進行は似ているんだけれど、こっちの方が好きだわ。曲の頭の所へつなげるグズラさんのグングン伸びる音、厚みがあってとってもイイ。おお〜、音川さんすごいぞやるねえ。森山さんの顔に笑顔がみえる、楽しそう、いいぞいいぞ。ノブソロいきなりのぶちかまし、わー、始まった。ノブvs森山に音川さん乱入、どこまでヒートアップするの、このバトル。グズラさんもギャンギャン、いけいけいけもっと行け!リズムリフを森山さんが入れたらノブ君そこで終了、にやっと笑って森山さんドラムソロに突入。ここで抵抗してもう1コーラスやればいいのに、森山さんの勝ち!みたいな? ああ、イイソロ〜、もう超人!!テーマ、爆走のまま終わる、拍手拍手!

「もうちょっとやりましょうね〜」、とハッシャバイが始まる。後ろから歓声。ノブソロ、きれいな音と不協和音を上手く取り混ぜて、メリハリのあるソロ。グズラさんがいいラインをつくっている。音川さんソロもまた、一本調子じゃなくて、いいフレージング。そうそう。そのフレージングにノブ君もしっかり反応して、いいグループだね。今日はベースソロもあり。ふぅ。

マイクを探して、「ありがとうございました。音川英二、田中信正、望月英明・・・・えー、折良く、4月5月と、井上とか板橋と一緒にすることができて嬉しく思っています。9月に私の地元、芸術なんとかなんとか・・・ダメなんです、もう何十回も何百回も言っているような気がするんですが、Alaと言っているところに9/18にコンサートをやります。今まで」あああ、MDが録音できていないうえ、こんどはメモを取っているボールペンのインクがいきなり切れた!書けない・・・慌てておとなりのOkadatoにシャープペンを借りてMCの続きを書く、中断してしまった・・・・だから欠けてるところもあると思います、ご容赦。「一緒にやったピアニストを一堂に集めて、といっても山下と板橋だけなんですけれど。私はジャズマンとは言えないくらい人付き合いが少なくて。その二人を呼んで、また8曲くらいしかないレパートリーで何とかやろうと思っていますが。話が長くなりましたが、井上淑彦、彼は名作曲者でもあり、名アレンジャーでもあり、彼に手伝ってもらって他ではできないことをやるつもりです。今、ステージの上にピアノを3台あげようかと言っていますが、ピアノ3台もあると何やってるか分からなくなってしまうんじゃないかという心配もあって、一台はスタインウェイ、一台はヤマハ、もう一台は卓上ピアノにしようかなんてバカなことを言ってますが」板橋さんお得意のピアニカなんてどうでしょう。「他ではいちどもやったことのないことをやろうと思っています。遠いですが皆さんも横浜から来てください。私も岐阜から来ましたから。ありがとうございました」

ノブ君の美しいイントロ、言わずと知れたグッドバイ。音川さんのサビからのテーマ。ノブ君のソロ、また心に染み入るというか、ひたってしまうわ〜。終わりのテーマ、くしゃみが出そうになって必死でこらえる。わーわー、何て感動でしょう。んん、すばらしい。幸せ〜。

終わってからも、むりなアンコールはなし。森山さん、尻上がりに調子があがってきた、明日も楽しみだ。

二日目の井上セッションのレポート