TOMさんと一緒に、千歳空港からレンタカーで幌別へ向かう。虎杖浜温泉に浸かったり、登別温泉で蛸の足を買ったり、雪道を迷ったりしながらホテルに到着。そこからはNamoさんに乗せていただいて会場となる室蘭NHKへ。イベントホールというところが本日のステージ。天井が高く、音の抜けもよさそう。あれっ?ドラムが白い!今回はドラムはあさって会場になる、札幌のジッピーホールからの借り物だとか。森山さんがチューニングをなさる。今回はお手伝いするところは少なさそうだわ。ピアノが左、ドラムが右側。リハーサル中、音川さんがピアノに座ったりして。TOMさんは、CDブースを作るのに忙しい。いろいろ工夫して完璧な準備ができていた、すばらしい。客席は約120人ほど入るようにセッティング。6時半少し前に開場。並んでいたお客さんは20人ほどか、大丈夫かなと思ったが、続々とお客さんが入り、当日券の売り上げも好調。いいぞいいぞ。

しーんと静まりかえった会場に7時5分、森山さんが「へへぇ〜」と笑いながら入場。かまえるとすぐにImpressionsが始まる。ベージュのジャケットに黒いシャツ、薄暗い会場に音川さんのサックスに反射した金色の輪が光る。音川ソロ、よどみなくフレーズが続く。ノブ君の細かい音の粒が並ぶ。森山さん大きく腕を横に開いて振り上げ、シンバルを叩く、ノブ君必死で森山さんを見ているが森山さんは反対の方向を見ている。森山さんがノブ君を見る時は、ノブ君が下を向いていて二人の目が合わない。ノブソロヒートアップ、あ、出たゲンコ打ち。イマイチ呼応が合わないな、ノブ君のフレーズに森山さんが応えていないと思ったら、お互いが併せる場所を決めていたみたいにばっちりリズムが合って、うわぁ〜、すごい、思わず口を開けてぽかんとしていたら、二人のやりとりに笑っている音川さんと目があった。いやホント、よくやるわ。タカタドン!で即テーマに戻る。フェードアウトかと思ったらバカン!で音がまた大きくなる、音川さんがサックスを振り上げエンディング。

「どうもありがとうございます」、とメンバー紹介。はあ〜、とおおきくため息をつく、会場からくすくす笑い。「いつのころからか、こんな息切れがするようになってしまいました。昨年ですか・・・・」と胸膜炎で入院した時の話(略)。「年を取ると昔のことをなつかしく思うことがあるものでして、私にとっては昔なんですが、コルトレーンのナンバーを一時好きになった時があって、でもその頃は山下トリオというグループででたらめジャズをやっていましたので(笑い)、聞くだけで演奏するとは思っていなかったんですが。妙になつかしく、こういうグループだとやってみたくなります。それで今日はコルトレーンの曲を何曲か選んで、やろうと思っています。最初の曲はインプレッションズでした。次の曲ももちろんコルトレーンの曲です。アフロブルー

音川さんソプラノで。ノブソロ、どこかで聞いたような曲のフレーズだ、あ、何の曲だっけ。ノブ君の持っていき方とグズラさんがばっちり合って、そろそろ終わりかと思ったら、まだコーラスが続く。音川さんが様子をうかがっている。森山さん汗が目に入って痛そう。音川さん高音の吹きまくり、ビョ〜〜〜〜と鳴る。うまくテーマに持って行ったな。

In a sentimental mood。ソプラノのテーマ。誰かの携帯が鳴っている。しっとりしていていいなあ、ソプラノの音色もいいし。ベースのラインがとてもいい流れ、ピアノとベースのデュオでも良いかもね。ノブ君森山さんに目で合図。森山さんがブラシからスティックに持ち替える。音川さんのフレーズがなめらかにつながって、とても良く聞こえてくる。こういう、フレーズがきれいに流れるのはいいな。高音の吹きまくりより・・・ソプラノは耳にちょっと痛い時がある。カデンツァーもとてもいい、けど何かがハウリングしていてもったいない。望月さんが気にしてベースアンプをいじったり、ベースの向きを変えたりしているけれど・・・

パコン!でサウンドリバー。テナーの音色も、Very Good! 目の前に大きなベルが。ノブソロ。あれ、ベースが止まった。ドラムとピアノのデュオだわ。ノブ君が一瞬退いたと思ったら爆発モードのバトル。まともに止まっている写真が全然撮れないが、雰囲気は分かってもらえるかな?
森山さん楽しそうだ、スティックがすっとんで観客の目の前に落ちた。ベースが入ってトリオに戻り、ノブ君爆走中に音川さんが割って入った感じでこんどは音川ソロ。タパタパタパと小気味のいいフレーズが続く。う〜、いいな〜とほれぼれしていたらいきなりドラムがブレイク。ベースとサックスのデュオ、これまたグズラさんのチョッパー風の音色がかっこいい。森山さんスティックをかまえてノブ君に合図、4人で一体となってまた音を紡ぎ出す。しかし、室蘭NHK、もったいないというか価値を知らないというか、こんなすばらしい演奏を中でやっているというのに、なんで音源として摂らないかね?ドラムソロ、タムをアフロっぽいリズムで叩きまくる、シンバルもスネアもほとんど使わないのにすごいバリエーションだわ、すばらしい、思わず身を乗り出して見つめてしまった、「技」「芸」を見た!という感じ。IINA〜(ノブ調)。終わりのテーマに。「ありがとうございました!」で休憩へ。

ふぅ〜。はぁ、何とも形容しがたい、くらくらっと軽いめまいがする。いい演奏だわ!

2NDセットは8:10にスタート。始まる直前、息子から電話。「お父さんが帰ってこないよ〜、電話しても出ないし・・・」と不安そう。「いいから冷蔵庫の中のものを出して夕食の準備をしておきなさい」と伝えるが、メンバーが控室から会場に戻ってきてしまい、あせる。座ったはいいが、メモを取るためのペンが見あたらない〜。どこだどこだとさがしているうちにどんどん音川さんの組曲の単品(?)が進んでしまう。森山さんが何か左手の方を気にしているようだが、別にハイハットがひっくり返っているわけでもないし・・・と思ってペン探しを続行していたら、しまった、モニターの音が出ていなかったのだ、ああ〜、申し訳ない。音川さんが自分のモニターを森山さんの方に向ける。PA担当のジッピーホールの高田さんがすっとんできて、いろいろと調整に走り回っている。森山さんががノブ君に目で合図、猛烈に叩き出す、サックスとデュオにするつもりか、ベースも次第に音量を落としてデュオになる。まだモニターの音が出ていないのか、高田さんは走り回っている。ノブ君への合図に腕を振り上げて、ベースもつけて4人の演奏に戻る。ドラムソロへ。

「今年も9月に私が今住んでいる岐阜県の可児市というところで、コンサートをやることになりました。通称Alaという愛称で呼ばれている所なんですが、できて3年目になりました、和泉モトヤさんという方がダブルブッキングか何かでヘリコプターで移動するかなんか、ってことで全国的に有名になりました。え〜、すばらしい会場がありまして、1000人のホールなんですが、第一回目がそこでやった時はゲストに山下洋輔、坂田明、ケイコリー、近藤房之助とそんなような人に出ていただきましたので、もちろんチケットを売りだしたとたんに売り切れで、可児市の人はすっかり驚きまして、森山さんっていう人はものすごく有名な人だと思ったみたいで。で、私は一回きりだと思ったもので、ジャズとはどういうものか、いろんなジャンルの人たちに出ていただいて、見ていただきたいと思ってそれをやったんですけれど、どうもそれがいいのか裏目に出たのかよくわかりませんが、間違った印象を皆さんに与えてしまったみたいで、『あの人がやるといつも満杯になる』なんて可児市の職員は思って、『来年は大ホールで二日続けでやりましょう』なんて、滅相もないことを言うんです。でもそれが実現してしまいまして、ニューヨークからジョージ・ガゾーンって言うテナーサックスと、え〜〜〜、何でしたっけ・・・」と音川さんに助けを求める。「エイブラハム・バートン」「エイブラハム・バートン、っていうアルトサックスと、ベースは井上陽介っていう3人を招いて大ホールで二日間やったんですよ、まあまあ二日間とも見た目には満杯に入りまして、一応のラインは超えたんですけれど。これでやめるかな、と思ったらやめないで、今年も第三回目っていうことでやることに決まりました。9月18日ですので、是非おいで下さい(笑)。ちょっと遠いんですが、私も来ましたから(笑い、拍手)お返しに。今年は、山下洋輔、板橋文夫、田中信正っていう歴代のピアニスト3人を招いて何ものかをしようかっていうことが一応決定しております」思わず拍手、パチパチパチ。「他の人たちは誰を呼ぶかっていうのはまだ決定していないんですけれど。とにかく、ピアニストは歴代の人たちを3人確保できました。・・・私の田舎の山梨で、85才の母親が一人で住んでいまして、これがまた元気なんです。口も減らないし、『お前はいくつになってもダメだ』なんて憎まれ口をきいて一人で生活しているんですけれど、一人で寂しいだろうと思って車で迎えに行きましてね、(コンサートを)見せてあげたんです。『お前はいい人に恵まれて幸せ者だな』なんて言われて『ああ、そうだよ』って言ったら、『仕事はそれで何をやってるの?』(笑)なんて、どうしてそういうことを言うんでしょうかね、ボケて言っているのか、からかって言っているのか、私にはもう判りません。この間正月の3日だかに、母親が一人でいて寂しいだろうと思って、娘も連れて親子三人で里帰りをしたんですよ。そうしたら、何やら障子も破れていてね、で、素通しガラスの外から中が見えてしまうんですよ。どうしてこんな破れたまんまにしておくんだろう、って思っても本人は破れているとかそういうことは気にならないみたいなんですね。で、僕が障子紙を買ってきて、慣れない手で障子紙を剥がして、きれいにして、障子紙を貼って、はめてあげて、ああ良かったよかった、って。それで帰ってきて電話をして『障子がきれいになったでしょう』って言ったら、『ああ、どうしてだろうね?』って。・・・白々しいんですよ。これも分かって言っているんじゃないかな、と思って。私も年をとったら、母親の真似をしようと思っています(笑)。本当にボケないうちに、ボケた真似をしながら、みなさんの反応を見ながら楽しもうと思っています。まだ年はそんなに行っていないんですけれど、そろそろトシを感じだしました。山下さんと会うと、『あんた変わらないね』『あんたこそ変わらないよ』って、他が見ていれば『何をジジイが二人変わったくせに二人で変わらない、変わらないだなんて言っているんだろう』ってきっとそう思われると思うんですけれど。こんな仕事をしていると気持ちは若いままです。なんのかかわりのない話をしましたけれど、二曲目は、そう、Gratitudeなんです。英語でGratitude、日本語で『感謝』。これはあの、前任のサックス奏者、井上淑彦が作った曲で、実にきれいな曲なんです。音川のスローも一回聴いてみたい。ね、早くいい曲作ってね」と言って「ははははは」とご自分で大笑い。「なんの関係もないことを言いました。また関係のないことを考えておきます、叩きながら(笑)拍手。

ああ、始まったと思ったらまた携帯に電話。切っておけば良さそうなものだが、病院から患者のことなどで指示を、という電話がかかってくることもあるので電源オフにはできないのだ。かけてきた主は、セイブ・ザ・イラクチルドレンの主催者の弁護士さん。んん、緊急性は多分ないだろうと勝手に判断して、鳴りやむのを待つ。ノブソロ。ゆったりしたテンポで、そんなに音数が多いわけではないのだけれど、音と音の間にニュアンスが含まれるような、広がりのあるソロ。バックでつける音川さんのサックスと絡んで、一つのワールドができる。森山さんの言うとおり、本当にいい曲だわ〜。ああ、音川ソロにひたっていて、テーマに戻ってゆったりしてたら、来た来た来た、ドカンドカンバシンパタドン!ドバンドカタドガタドバダグワシャ・・・こりゃテンポをとるのが大変そうだわ・・・。あれ?すこしゆっくりになったような気がする。一旦静かになったと思ったら、また森山さん大暴れ。よくもまあ、って感じ。きれいにまとめて、エンディング。

ノブ君椅子の高さの調節。これで何回目かな?

何も言わずいきなり即座にSunrise。隣の人が足で拍子をとっている、気がついたら私も揺れている。音川さんのソロ、こなれていていいわ。こういう持って行き方の吹きまくりはよろしいわ。リフのリズムをバスドラムで入れてノブ君もガーンガーンガッガとつける、いやはやなんとも、いいソロ。そこでソロはノブ君に交代。抑えめのペースで始まったソロだが、何ともヒートアップがすごくてフレージングのバリエーションと相まって引き込まれる、そしてドラムソロ。 また何とも書きようのない迫力。ほへ〜、終わりのテーマになだれ込む。

「音川英二!望月英明!田中信正!ありがとうございました!・・・先ほど天気予報を聞きましたら、明日は大荒れの天気だそうで、私たちは根室に行くことになっていますが、根室は大雪警報がでているそうです。多分飛行機が飛ばないんじゃないかっていうので、もう一回明日ここでやることになるかもしれません。今日ここにいらした方は明日もまたいらしてくださいね」

ノブ君がグッドバイを弾き出す。あれ〜?ハッシャバイに行くと思ったんだけれどな。アンコールにハッシャバイを持っていくつもりだろうか。イントロにこのメロディーはなんと言っていいものか。テーマもリズム、テンポともにノブ君らしい。アルペジオ風の音階も入り、ゆったりとした雰囲気。グズラさんのベースが効いている。ん〜、ノブソロ、せつないわー。波が打ち寄せてくるような感じ。お?もう気がついたら50分近く経ってる。ふ〜。

アンコール!戻ってくると、バスドラムを一発踏んで「もうできる曲はあと一曲だけです」拍手。「何かこう、マジシャンの誰かみたいね、こういうトーク。バレバレのことを平気で言って・・・やりますよ」笑い、拍手。

ハッシャバイ。音川さんがテーマを吹き始めたら拍手!大喜びしている人もいる。ややアップテンポ。ノブ君靴を脱ぐ暇がなかったのかしら、靴を履いたまま。ノブ君ソロを終わろうとしたのに音川さんが入ってくれないのでもう1コーラス、苦笑い。記憶にある中で一番速いテンポかも。音川さんのタパタパタパタパ、フレーズが心地よい。グズラさんのソロをさえぎるかのようなドラムソロ。テーマに戻り、終了。ああ、堪能しましたわ。

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