2005年北海道ツアー最終日輪西市「わにホール」(音川英二・佐藤芳明・田中信正・望月英明)

午前中名古屋の自宅を出て豊橋で仕事をし、新幹線で名古屋へ戻り、名鉄で名古屋から中部国際空港。飛行機で千歳空港、列車で東室蘭、タクシーに乗って開演30分くらい前に「わにホール」へ到着。間に合って良かった。19時にNさんが登場して挨拶。「森山さんは4日連続演奏で今日が最終日ですが、まだまだ力が余ってますからすばらしい演奏を聴かせて下さると思います・・・」大丈夫かしら。


Sound Riverから。わあ、やっぱりいいなぁ、はるばる来た甲斐があったとこのテーマを聴いただけで思う。森山さんストライプのシャツだけれど、切り替えが入っていて面白い柄、初めて見た。ノブ君白いシャツ、今日はぱりっとしてるね、やっぱりこの方がいいよ。ライトの色がぱっぱっと変わって点滅するが、客席の方を向いたライトなのでちょっとまぶしい。佐藤ソロ、小花模様がかわいいシャツ。ちょっとフレーズのとらえどころがなくて流れがつかめない。音川ソロ。佐藤君が音川さんの方を見ながらバッキング。わあっと音を急に大きく出して伸ばして不穏感をあおる。森山さんがダンダンダン!とリズムパターンを出してソロ終了。ノブソロ。ノブ君の方を覗き込むようにして佐藤君バッキング。ノブ君の繰り出すフレーズと森山さんのリズムがぴったり。ノブ君がガガガガガガと弾くと森山さんがダダダダダとと呼応する。森山さんノブ君をしっかり見据えて叩きまくる。森山ソロ、ライトが点滅してちょっとまぶしい・・。客席から拍手!テーマに戻るところちょっと合わなかったような気がするが?


「どうもありがとうございます。メンバー紹介します。テナーサックスそしてソプラノサックス、音川英二です。アコーディオン佐藤芳明。ピアノ田中信正、ベース望月英明です」佐藤君のマイクがバリバリバリッと音を立てる。「大丈夫ですか?曲が終わったとたんに調子が悪くなって」ちょっと身体を動かすとまたバリバリッ!ちょっと操り人形風なポーズで演技、客席が沸く。「ちょっと様子を見てきてくれますか」大丈夫です、と佐藤君。「心配になると演奏できなくなっちゃいますね。ガリガリ音がしても気にしないで行きましょう!直立不動でお願いします。最初の曲は音川英二が作りました曲でサウンド・リバー。次の曲は前一緒にやっていたピアニストの板橋文夫が作りました、渡良瀬です」場内から拍手が湧く。テーマからソプラノソロ。ちょっともの悲しくて切ない気分になってくる。アコーディオンソロ、ていねいに鍵盤を押さえて紡ぎ出す。少しだけバリッという音が時々はいるが、それほど気にならない。ノブ君の方を見てソロを渡す。ああ、水が湧いてきた、澄んだ湧き水だ。そして雨だれを集めている。少し流れに乱れを生じたりしても美しい川の流れは変わらない。小さな音でノブ君のバックを音川さんと佐藤君がつけ、テーマに戻る。音声さんが出てきた、アコーディオンのケーブルを交換している。


「アコーディオンって楽器でジャズを特に演奏している方はいらっしゃるんですか?」佐藤君頷く。「いらっしゃる、ほお〜。じゃあ、全く競争がない、わけじゃない」笑い。「国立音大の学生になってからこの楽器に目覚めて。日本では教える人がいらっしゃるんですか」佐藤君が頷く。「林家三平さんと一緒にやっていたひとがいましたよね(爆笑)・・・古いですか?でも絶対的に数が少ないですよね。フランスへ留学して、アコーディオンのジャズの巨匠に師事して、お名前は知らないんですけれど(笑)。不思議な楽器ですよね、右手は鍵盤ですが左手はボタンが一杯並んでいて。あるボタンを押さえるとドミソみたいな和音が出て、あるボタンは別の音が出て、それが順序よく並んでいるわけじゃない」「順序よく並んでるんです」「だから弾きやすいわけですよ」爆笑。「この楽器については全然知らないんで、逆らいません。大変ですね、左手で扇ぎながら扇ぎながら演奏するんですもんね。ご苦労様です」と頭を下げ、佐藤君も頭を下げる。「日本へ帰ってきてジャズを始めて、このバンドにはいって下さったという、もうなくてはならない存在です」拍手、メンバーも拍手している。「次の曲はこのセットの最後の曲です、短いですね。曲数少ないですね、ってさっき主催者の方に言われました。生涯10曲くらいしかやらないもんですから。じゃあお願いします」


アコーディオンのケーブルが変わってから音、アクションも大きくなった?安心して弾けるようになったのかな?この曲、本当にかっこいいわ。ノブソロから。佐藤君アコーディオンをつり下げているベルトの首周りを気にしている。ノブ君後ろ脚をつかまれたバッタのように頭を上下させている。森山さん上体を前のめりにさせて両腕を大きく腕をひろげ、シンバルを水平に叩く。リムショットでノブ君に勝負をしかける、低音の連打。ノブ君先行、弾きまくり。森山さんもどう応戦しようか。面白い勝負!うまく組み手が合った、って感じで押したり引いたりの駆け引きが面白く、思わず笑ってしまう。ベースがその合間を黙々と縫って、弦が師板に当たる音がバチバチと聞こえる。音川さん低音を基盤にした落ち着いたソロ、リズムパターンを変えて吹く、佐藤君が喜んで頷きながらバッキング。ノブ君少し手を休めて真剣に聴いている。佐藤君音のメリハリをつけてバッキングを続けている。音川さん吹きまくり!こんどは佐藤君と森山さんのデュオ、音川さんが二人の視界をじゃましないように後ろに下がる。佐藤君どう仕掛けていくのか、森山さんはちょっと様子見。テーマのモチーフのパターンを繰り出して、真剣に戦いを挑む佐藤君。さあ来たぞ来たぞ〜、やれやれ〜!大受けだ!ソロのエンディングに音川さんも凄いアクションでつける。森山ソロ、シンバルをあまり使わずにタムとスネアのショットで叩きまくる。スティックが折れて飛んだ!(写真は折れたスティックが飛んだ瞬間)折れたまま持ち替えずに叩いてない?ドラムヘッド、破れないか心配。そのままテーマへ・・・心配で息を呑んで見守る。


20:05。佐藤君が一人で登場。知らない人が見たら、マイクの調整に出てきたと思うかも?ソロでの
アリゲーターダンスがスタート、マイクがバリッ!そうか左手のボタンを使うと、右手は鍵盤を弾かなくてもこんなにいろいろな音が出るのね。もうバリバリいっても気にせずどんどんやるしかないわね。メンバーが登場。森山さんシャツをお気に入りの横縞のカラフルなものに着替えている。今日はテーマは全員合わせて、根室までで聴いた「アウト」な感じは消えている。音川さんがノブ君に合図してピアノソロからはいる。佐藤君ステージから降りる、舞台上はカルテットに。3拍フレーズでアクセントをつける森山さん。佐藤君音声さんの所へ行ったかな?ノブ君、音川さんを見上げ苦しそうな顔、音川ソロへ。おお、アコーディオンのところにマイクが立った。これでバリバリを気にしなくて演奏をできるといいねぇ。ドラムソロ、みんなじっと見守る、森山さん一人で叩きまくり。


「この曲は山下トリオを辞めて3年くらいブランクがあった(実際はそんなにないよ)んですが、板橋文夫とグループを始めたときに初めて板橋文夫が作ってくれた曲で、アリゲーターダンスです。あれから何年も月日が経ちました・・・・・・」と遠い目をする、場内からその「間」に笑い。「今思い出していたんですけれど、うちの母親がそうなんですよ。85才になるんですがいろいろなことを忘れてしまって。この前も山梨まで迎えに行って、コンサートを聴いてもらったんですが『あんたはいいねえ』って涙ぐむんです。『いい仲間に囲まれて』っていうんです。『そしてそれで仕事は何をしているの?』いまだに私は仕事をしてないって思ってるんです。今日も仕事なんかしていません!1人で楽しんでいるんです。次の曲はテナーサックスの井上淑彦が作ってくれた曲で、『感謝』です」


ゆったりしたテーマが始まる。目をつぶって聴いて浸っていてもいいけれど、目をつぶっているのももったいないし・・・。ああ、マイクちゃんと音を拾っているわ、よかった、ふー。美しいノブソロ・・・。音川さんのソロ、うん、本当にいい音だ。森山さんがマレットからスティックに持ち替える。本当に感謝したくなる、ため息が出る。この、ホールの皆を包む空気、澄んで優しい・・・。ブラシで叩きまくる森山さん。ああ、もう脱力ですわ。口笛とアコーディオンのテーマ、そっとみんながつけてふんわりとやさしく終わる。


森山さんフェイントもかけずじっとノブ君の方を見ている。ぱっと腕を振り上げ
サンライズにはいる。もう安心して聴いてしまう、音川さんのバックでリズムリフを入れる合図を森山さんが目だけで出す。いいなぁ〜。佐藤君ソロ、うまく盛り上げていく。しかめっ面して弾きまくる佐藤君、森山さんが大きく腕を振り上げてリフに入る、イイゾもっとやれ〜。そのままドラムソロに入る雰囲気、ピアノソロ忘れちゃったの森山さん?1コーラスで気付いたか、ノブ君に入るように促す、どうやっていいかノブ君一瞬迷う。ベースがとまっていきなりドラムとピアノのデュオになってしまった。森山さんいきなり仕掛けてきた、ノブ君不意をつかれて一歩退く。半分ドラムソロ状態からで、8バースでもないしな?どうなることやら、すごい緊張感だわ!ノブ君タテノリしながらノブ君どう応戦しようか・・・二人でどっちが攻撃を仕掛けるか、どっちが音を出すのかにらみ合い。森山さんがリズムリフを入れてノブ君に入るよう促すがテーマになると思ったのか、テーマっぽいフレーズを弾く、でもさびからベースが入ったら普通(?)のピアノソロになった。音川さんが助け船を出すがまだノブ君ソロを1コーラス続けるのね。森山さんはそのままずっと全力疾走を続け、ドラムソロに突入。スティックが飛ぶ、また飛ぶ、奇声が上がる、そしてすうっとトーンを下げて・・・いきなりパカン!でテーマに戻る。


「ありがとうございました!」で頭を下げる。「音川英二!佐藤芳明!田中信正!望月英明!」ノブ君ステージから帰りそうになったが、ハッシャバイが始まる。少しテンポがゆっくりめかな。テーマは音川さんが吹き始め、サビの部分は佐藤君が弾き、音川さんが絡む。佐藤君のソロ、いいフレーズ満載。音川ソロが渋い!!佐藤君真剣に聴いている。ジャズっぽい、というか正当派のフレーズだ。モードっぽいフレーズもばんばん出てくる。ノブソロ、あ〜ん、終わっちゃうよ〜、淋しいよ〜。ベースソロの終わりを音川さんが引き継ぎ、テーマに戻る。


「4日間連続で演奏するなんて、このところなかなかないんじゃないですかね・・」いえこの前のゴールデンウィークは4日間5演奏でしたよ、組長。「このごろになってやっと気付いたんですが、年を取って体力が消耗するって、集中力ですね。身体の方は疲れなくても頭が一番ついて行かなくて。こうやってお互いに演奏をしながら次々とアイディアを出してフロントとやりあったり、バックアップをしてサポートして触発を受けたり。そういった種類のジャズなので、集中力が切れると話をしていても会話が成り立たなくなる、そういった演奏でお互い会話をしているっていうことが一番大切なことなんです。でも歩くとき何も考えなくて歩くということではなく、なぜ歩くかって考えながら歩くように、相手のことを思いやってやりあっていく、っていうことが年とともに衰えてきたんじゃないか、って気がしています。・・・・・そんなわけでこの演奏が最後になるかもしれません。今夜が山です、なんていわれた病気にもなりましたし(笑い、でも本当に一昨年のお正月あたりは肺炎で危なかったんです)。今日は本当に楽しみました、ありがとうございました」と頭を下げる。


ノブ君にスポットが当たる、森山さんは暗闇の中で頭を下げたままでじっとノブ君のピアノを聴いている。この完成されたようなイントロからテーマ、ノブ君一人で作り上げていく。テーマすごく低い音でピアノ。サビから音川さんが入る。佐藤君のつけるバックが渋い。アコーディオンのソロ、すごくいい!!サックスのサウンドもいいわ。ああ、浸っていく。相当だらしない顔になっていたな、今。人に見られたくない顔だ・・・。
またアンコール拍手が始まっちゃったよ、長瀬さん何とかして・・・。森山さん、それからメンバーが戻ってきた。もうやらないだろうとは思うけれど。


「プロになって40年、今もこうやって叩いているのはいい仲間がその時代その時代にいたからだと思います。ピアニストでいえば山下洋輔、ジャズを辞めるつもりが板橋文夫との因縁的な出会いがありました。今またこうして若い人とやれるようになって。佐藤君はボクの息子って言ってもいいくらいの年の開きがあるんじゃないでしょうか」佐藤君が頷く。望月さんがするすると若手三人から離れて森山さんの方に寄っていく、会場から笑い。「アフターアワーも楽しく過ごしています、望月さんを除けば皆これからの人ですから(笑)また北海道でお会いできると思います、ありがとうございました」


打ち上げは大ごちそう!それから、深夜日付が変わって長瀬邸へご招待、長瀬さんの吹く「ハッピーバースデー」でノブ君の誕生日をみんなでお祝いしたのでした。

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