森山威男公認HPライブレポートNo.120

今日もリハーサルは5時から、和気あいあいとリハが進む。森山さんはいろいろと以前やった曲を思い出しながら、「あれは?」「これは?」と掘り起こしていく。そしていろんな曲で森山サウンドが展開される。この秋のalaに向けてこのグループでのサウンドを作り上げていこうという雰囲気。すご〜く楽しみ。

午後7時半すぎ、メンバーステージに登場、ノブ君も走ってピアノに座るが、指にはめているごつい指輪を外すのに手間取る、森山さんがノブ君の方を見ている、「あ、はい」とスタンバイして森山さんの方を見るノブ君。

Catch up with him。メロディーが変わるところ、佐藤君が確認するように後ろを振り向いて森山さんを見るが、森山さんそのまま叩き続ける。思わず目が合ったが、大丈夫誰にもわからないよ。森山さん考えながらちょっと不安そうな顔でテーマのバッキングをする。佐藤君からソロ。昨日出番のなかった音川さんのソプラノサックスは箱に入ったまま佐藤君の足許にある。佐藤君光沢のある黒シャツ。ああ、毎回このところ手を伸ばせばミュージシャンに触れそうな(下手すると向こうからぶつかってきそうな)席ばかり、贅沢〜。カンカン響きわたるリムショットをバックに佐藤君が弾きまくる。すっと振り返って合図、テーマのフレーズを入れる。グズラさん半袖の黒のTシャツ、ノブ君は白の長袖Tシャツ。森山さんはおなじみマオカラーのスーツ。音川さんソロ、黒の胸当て付きシャツ、シルバーのテナーに負けずに首に下げたペンダントがきらきら光る。森山さんが腕を大きく鷲のように広げる、次から次に力強くフレーズを吹き続ける音川さん。よくこれだけまあすごい音が出せるものよ。ノブ君が腕を大きく広げて鍵盤を左から右まで弾きまくる。うう〜、かっこいい〜。
寒くないのに鳥肌が下からゆっくりと上がってくる。ノブソロになりちょっとトーンダウンしたかと思ったら、どんどんヒートアップしてくる。ノブ君の演奏を皆がとても楽しそうに見ている。ノブ君佐藤君を見上げて合図、佐藤君が大きくアコーディオンを揺らして音を出し、バッキングを始める、あれ今Mr.P.C.のフレーズが入った。しつこい3拍フレーズだ〜。鍵盤をガガガガガガ〜と叩きまくる、森山さん暴れまくる、うっひゃ〜、もう胸が苦しくなってきた。ピアノソロが終わってドラムソロへ。ノブ君ピアノの前で腕を伸ばすストレッチ運動。森山さん、なんて人だ、超人!思わずのどがカラカラになってしまっている、う〜、一曲目からなんて演奏だ、佐藤君が振り返って合図、森山さん汗だく、エンディングうまく決まった、すごい演奏!最後の音を出し終わって観客席は拍手と歓声の渦、あまりにすごい演奏だったので思わずメンバーから笑みがこぼれ、音川さんは思わずウォ〜、ウォ〜と雄叫びを上げている。

森山さんタオルで汗を拭きながら「泣いているわけじゃないんですが、目に汗が入って・・・音川英二です。田中信正。佐藤・・・芳明。」ちょっと間があって「望月英明。名前をちょっと、忘れた訳じゃないんですが。この前まで板橋文夫と井上淑彦と3回ばかり演奏してたんですよ。間違えそうになっちゃって。まあ、でも板橋と田中を間違える人はいないと思いますけど」笑い。「このセットの最初の曲はちょっと緊張ものでしたけど、この日のために佐藤芳明が作ってきてくれましたものでGet theなんとかいう」・・・「ゲッツ!だぜ、じゃなくて」大爆笑。「英語力がないものですから。あ、Catchだ」「Catch up with him」と佐藤君と森山さんが一緒に。「春になれば思い出す、そんな意味はないんですけれど。え〜」「彼をつかまえて、追いつけっていう意味で」「追いつけ追い越せ、なるほど〜。なかなかウラがありそうな由来ですね」実は森山さんを追いかけろ、っていうことらしいです。「Jazz Flash30周年にふさわしいタイトルだと思います(笑い)。ありがとうございます。おめでとうございました佐藤さん」とマスターに向かって。客席から拍手が沸く。「こういうライブをやりながら店を経営していくというのは大変なことだと思います。私も2年くらい喫茶店をやった経験があるんですけれど、ライブも何もなくても、私には向いていないと実感しました。え〜、今のセットには佐藤さんが新しく作ってきてくれた曲が2曲あるんですが、次はそうではなくて音川さんの曲です。Hole in the worldっていう曲で。さっき聞いたら、何この目の穴のことを(瞳孔ですね)Hole in the worldって意味なんだって?」「(意味が)隠してあるんです」「なるほどね。世界が見えるって言う意味」「そうです」「う〜まいこというね〜」と感心したように、笑い。「そういう題をつけると何かいいことがあるんですか」音川さん思わず「アハハハハ」と笑ってしまう。「演奏が変わってくるとか、聞く姿勢が違うとか」「聞く姿勢はわからないですけれど、演奏の姿勢は変わるかもしれません」「それじゃ説明してくれなきゃ。世界の穴だ、っていうから何のことかと思った。演奏しているときに何考えていいのかって。じゃあ、わかりました。今日はこの目に映る世界っていうのをイメージして演奏してみましょう。・・・ほとんど同じかもしれませんが」爆笑、メンバーも大笑い。「Hole in the world

ン、ンとテンポを出す森山さん。昨日より少しテンポが速いかな?テーマ、ノブ君のピアノが何小節か入る。音川さんソロから。ゆったりした感じ、森山さんの左手のスネア3連符が心地よい。森山さん汗だくで目が痛そう。佐藤君ソロ、足が細かく動いてバランスを取る。右に左に体重を移動させながら、自分でサウンドを確認するかのように頷きながら、後ろ蹴りも出る。ノブ君にソロを渡す、森山さん汗が目に入ってしかめ面。テーマに戻る、ああ厚みのあるサウンドだ。サックスのソロ(ブリッジ?インタールードってのかな)が数小節、エンディングへ。ううむ。

ノブ君がそっと弾き始める優しいバラード。髪の毛がじわっと逆立ってくる。テーマを音川さんが吹き始め、サビは佐藤君。グズラさんのベースが優しい。暖かみのあって太いサックスの音色が渋かったり堂々と響いたりして。ドラムは少しお休み、アコーディオンのソロにピアノ、繊細にグズラさんがつけて。森山さんもマレットでシンバルを細かく揺らす。シズルの音が細かいさざ波のように寄せては返す。佐藤君のソロが終わりに近づき、ノブ君がどうするのかな?って顔をしている。佐藤君も大きく目を見開いて、グズラさんのベースラインが頼り?ノブ君のソロになった、森山さんだんだん音を大きくして行く。なんて繊細なサウンド、大事にしなければ手の中からすり抜けて行ってしまいそうな、・・・ああうまい表現が見つからない。テーマも、もう言葉が見つからない。佐藤君が大事な人を思いながら書いた曲なんだろうか。最後は教会音楽のような、パイプオルガンのようなサウンド。

そのままN.O.W.へ。いきなり爆走だ。ノブソロから。森山さんバシ〜!!と大音響でバスドラを踏み、佐藤君がのけぞる。ノブ君すごい勢い、グズラさんがぴったり付けると森山さんも楽しそうにアフロリズムを付ける。いったい何という演奏なのだ。あれノブ君ドレミの歌?もう表現のしようのない不思議な音階、予想もつかない音の玉手箱、どんどんメロディーがわき出してくる。音川ソロはドラムスとデュオ、音川さん倍音キーキー、緊張感の高まったところでドンドン、バシ!で全員のバッキングが戻り疾走する。アコーディオンソロへ。佐藤君のバックで森山さん、少しテンポを崩して止まっちゃう・・・のかと思ったが、さあヒートアップしてきたぞ!森山さんもリズムをいろいろ替えて佐藤君をあおる。出た〜、あはは〜、もう、何とも言えない佐藤君のソロ、前腕弾き、スネアの音が耳に痛い!ドラムソロ、録音機のレベルメーターが真っ赤になる、リズムキープしながらバスドラ二つ打ちとハイハットを踏み続ける。さあどうやってテーマに戻る?パカン!の音でノブ君ピアノに飛びつく、もう何って言えばいいの、すごいハイテンション!1st set 終わったところでもう放心状態、言葉がありません。クリちゃんは、インテルの時と違った意味で涙目・・・

短い休憩の後2ndセットへ。ノブ君ピアノの椅子に座って靴ひもを結び直している、いいことです。森山さん「どんな曲だったっけ〜」ってメンバーに訊いてる、「じゃあカウント出して」うひ〜、ドカドカっといきなりアップテンポのDR.MFが始まる。久しぶりだねこの曲。音川ソロ、森山さんのリムショットとトップシンバルがバシーッと音川さんのサウンドに合って、カーンと突き抜けるような心地よさ。Straight aheadな音。佐藤君がにやっと笑って、森山さんと目を見交わして笑い合う。しっかし、よく吹けるねえ。このサックスきのう触らせてもらったけれどすごく重いんだよね。佐藤君ソロ、ノブ君何かを確認するかのように首を傾げながらステージを見ている。ピアノの音が少し小さいかな?佐藤君弾きまくり、グズラさんがまたすごい。この人達、なんてかっこいいんでしょう。うわあ〜、全体で一体に、一丸に、一塊になってる、もう息が止まりそう。蛇腹をいっぱいに引いて大きなアクションでソロの終わりに持って行く佐藤君。ノブ君のソロになったらみんな止まって一人のフリーソロに。森山さんノブ君を指して笑う、グズラさんも笑っている。予想外の、息をもつかせぬ展開だわ。本当はベースかドラムかとのデュオになるはずだったのかな?ノブ君の不思議な音階とリズムのピアノソロに森山さんが途中から参戦してデュオバトル。森山ソロ、このスティックさばき腕の動きの美しさ。スネアの皮破れるのでは、シンバル割れるのでは、ああもうしびれちゃう、もう涙!

「このセット最初の曲は・・・題が難しいんですよ、未知からの出発?」「そんなようなものです」と音川さん、「英語でしょ?言えないよね、何ていったっけ」「何でしたっけ」というので「Departure from the mysterious flash」と思わず助け舟を出したら客席から「おお〜」「偉いな〜」と言われてしまった。「むずかしい!これはピアノの鈴木宏昌さんが作ってくれたんですよ。このグループでレコーディングするときに何か一曲できないだろうかとディレクターの方がお知り合いだったので電話してくださって、そのときには病院で寝ておられたんですが、当日の朝ファックスで送ってくださったんです。それを見ながらレコーディングしたんですけれど。それ以来手を付けてなかったんですけれど今日練習しようかと」と言ったとたん自分で「練習!」と突っ込んでしまって、大爆笑。「・・・・・・・あ〜」とため息。必死でみんな笑いをこらえる。「・・・・・・・・・一生懸命やってるんですけどねえ・・・・・・」笑い、「それは皆さんわかって下さってると思います」と佐藤君。「演奏したあと、頭がそんなに働いてないんですよ。だから何か言わなきゃと思いながら何も出てこなくて・・・・昔、うちの親父が言いました、『そんなに叩かなきゃ喰えんのか』って」もう大爆笑、まるで落語の高座。「そんなわけでもないんですけどね、叩くとこうなるだけで、お金数えながら数を叩いてるわけじゃないんです(笑)。え〜、次はこれまた今日練習したんですよね。これは言いやすい曲でしょ、Blue indigo」「そうです」「意味は何ですか」「青い藍色」「青い愛?」「藍色、Blues in Dなんです」「それはどういう意味ですか」「Dのブルース」ノブ君が横で「へ〜、そうなんだ〜」と感心したように頷いている。「なるほど、それをもじって。うまいねえ〜」座布団一枚、と声がかかる。「まあでも曲を作れる人はいいですよ、今日は佐藤さんも2曲書いてきてくれたし、音川さんも曲書いてきてくれたし。さっき訊いたんですよ、曲作るのにどうやって作るんです?って。そうしたらピアノでこうやって押さえたら出てくるんですって。私なんてこうぽーんと押さえても湯の町エレジーかなんかになっちゃう」会場爆笑、佐藤君手を叩いて大受けしている。「田中さんはどうやって作るんですか」「いや同じです」「ほう同じ、こんなんなってやるの?」とノブ君が腕を広げて首を折ってピアノを弾く時のまね、大受け。「いいですね、ホントそうなりたいわ」笑い。「演奏している時の頭の中の構造が少しわかるんですよ。だってコードの音が全体で鳴っているときに自分はどうアドリブするとか、その時の節を取り出してやれば出てくるわけだから。ドラムなんか何考えてるんだろうって、そういうのがないわけだから、ジャズのことなんか何も知らなくてジャズのグループをやってるわけだから、何考えてるんだろうって(自分でも思っている)。何か演歌でも頭の中にあるんでしょうかね、ようわからんのですが。よくわからんのはこの人も同じで」とグズラさんを指差す、大大受け、佐藤君壁にへばりついて笑っている。「今日は(ドラムの後ろにベースが位置しているので)ここで聞いているとすごくよく聞こえるんですよ。今日だけすごいことやってるの?」会場笑いの渦、グズラさんそこで頷く、もうおかしくておかしくておなかの皮がよじれそうだ。「いいことやってるんですよ、聞こえます?」観客もメンバーも頷く、「じゃあ次はBlue Indigo。音川英二です」

もう佐藤君と音川さんもとても楽しそう、この2人の顔を見ているだけでこちらも楽しい。ミディアムテンポ、とても心地よくスイングしている。佐藤君ソロ。体を上下左右に揺らしながら、左右足を交互に上げる。おや、ジャンプも出た。深いなあ、このバンド。いろいろな切り口、いろんな面、面白さが次々に出てくる。徐々に音を小さくし、音川さんが佐藤君に合図して最後の決めのフレーズ。

Gratitude。このしんみりとした美しさ、緊張感から解き放たれて深いため息が出る。美しすぎる・・・佐藤君ソロ。身動きできない。足許のバッグからハンカチ出したいんだけど・・・いつの間にか両の頬を涙がつたう。音川さんが頷いてノブ君ソロへ。どうしてこんなに胸を打つんだろう。優しいだけでなく、深みも力強さもある。ああ、音川さんソロが今日はなかった残念。グズラさんのベースはバックでソロを弾いているみたいだしドラムも大暴れ。そしてエンディングへ、余韻を楽しみたいのに拍手が一瞬早い人がいたのと、カメラのシャッター音が響いたのがちょっとだけ残念。

音川さんのルバートから911、ちょっと不安げなピアノサウンドにベースの音が緊張感を添える。もう呆然、このバンド。佐藤君がガン!と弾くたびにこっちも力が入る。すごいアップテンポの曲。佐藤君ジャンプするかのようにぱっと振り返ってリフ。音川さんぶっとばし。森山さん千手観音。グズラさんベースの弦をバンバン叩いて。もうペンが持てない・・・テナー、ドラムのデュオになるのかと思ったらノブ君と森山さんが示し合わせてバシ〜ッとブレイク。ベースとテナーのデュオ。森山さん楽しそうににや〜っと笑う。さあどうやって戻って行く?このすごい緊張感、グズラさんもすごい。ノブ君はじっと森山さんを窺う、森山さんざああっとロールを入れる。救急車のサイレンのような音階、佐藤君楽しそう、ぱっと音川さん佐藤君を見て2人でリフを、ばっちり決まる。ノブソロカリカリカリカリ、こんどはスタイルを崩してパターンがいろいろ。うう、1時間超えたよ。ノブ君両腕を伸ばして鍵盤につんのめるように弾きまくる。ノブ君と森山さんの叩きのめし合いの後ろでグズラさんは黙々とラインを刻む。ノブ君ガ〜ッとグリッサンドしつつ音川さんを見上げる、リフ入れてブレイク、ドラムソロへ。もう書く言葉が見つからない、頭がぼ〜っとしてきた。ドラムソロが最高潮に達したところでだんだん音量を低くし、ふっと音がとだえて静寂を作る、この落差!音川さんそっと吹き始めて、全員で終わりのテーマ、ガーンガーンと森山さんが叩くリズムと音川さんがブロウするリズムが示し合わせたようにぴったり。

「佐藤芳明!音川英二!田中信正!望月英明!ありがとうございました!」

Hush-a-byeだ。テーマは音川さん、サビは佐藤君。よく歌う佐藤君のソロ。おお太いサックスの音でソロが始まる、なんだか歌謡曲みたいなフレーズも。森山さんがなんだか眠そうな顔をしているように見える。おやもう終わるかと思ったらまた次のコーラスに突入、ノブソロまた少し不思議なメロディー。よくこんなの思いつくねえ。佐藤君に大受けしてる。汗を拭く森山さん、聞いてるこっちも暑いくらいだもんねえ。ベース1コーラスソロでテーマに戻る。拍手!

森山さんはノブ君の方をいたずらっぽい顔をして見る。ノブ君「やるの?」って顔をして、徐々に低い音からイントロ、そしてGoodbyeのメロディーを紡ぎだしていく。
森山さん手をついてがっくりと肩を落として頭を垂れたポーズでノブ君の音を聴いている、静寂、なのにまたカメラのシャッター音が響く、大音量の曲の間なら気にならないんだろうけどな〜。森山さんサビ直前でマレットを持って頭を上げる。音川さんがサビを吹く。佐藤君ソロ。なんだか切ない気分になる。アコーディオンを揺すってサウンドに彩りを添える。ああ、クリアな音のサックスのサビ。胸をしめつけるような、切ないような、懐かしいような、このままずっとこの気分のまま浸っていたい。

終わって、舞台も客席も拍手をして、皆が叫んでいるようだ。なんとすばらしいライブ。ジャズフラッシュの佐藤さん、30周年(本当は9月らしいけど)おめでとうございます、そして本当にありがとうございました。


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