子犬を救助した望月さん中津まで松浦さんとネイマの小野さんがお迎えに来て下さった。ぐるーびいーに寄って車に楽器を積み込む。コーヒーとマスター手作りのココナッツクッキーをいただく。ごちそうさま。お別れをして車に乗り中津から大分に向かう。森山さんがMDを取り出しヘッドホンをかけようとしているのでそれを車内で聴くことにした。この秋に出る渋谷さんと森山さんのデュオのCDをMDに落としたもの。今のバンドを聴きなれているので、ちょっと違和感がある。

車、高速道路の少し手前で渋滞。高速に入るための渋滞かと思って見ると小犬が一匹大通りをうろうろ、今にも轢かれそう。危ない!子犬を避けるための渋滞であった。と、前の車にのっている望月さんが助けに走った。雨でびしょぬれ、泥だらけの子犬を望月さんはしっかり抱っこ。見れば首輪をしているけれど、飼い主の判るようなものはない。そのまま車に乗せて高速道路へ。今日は霧のため高速道路が途中で通行止めになっている。降りて一般道路を走ったのだがこれがまた目の前が見えないくらいの真っ白け。うわー怖い。

けっこう時間がかかったが無事に大分のネイマに到着。濃霧三角屋根の半分地下になっているライブハウス、板橋さんや片山さん、いわば中央線沿線系のジャズをいっぱい呼んでやっていらっしゃる根性のすわった店だ。いいなあー。Lの字型に客席がなっていて、角のところにステージが。ホーン奏者はどっちを向いて演奏したらいいか迷うという。壁には本棚があっていジャズ関係のいろいろな本や雑誌、アジアンアクセサリーやお香なども販売している(あ、お香のスタンドを買い忘れた)。

ランチをいただいたが野菜とお肉を煮たもの、ゆずの香がするお漬物、黒米がはいったごはん、野菜たっぷりのお味噌汁、鯛のフライに付け合わせのお野菜。うまく言葉にできないけれど(写真をとっておけばよかった)彩りも美しい、なんだか自然に手を合わせていただきます、ごちそうさまが口に出てしまうような心を豊かにしてくれるお料理。車に揺られて少し食欲がなかったのだがぺろりと食べられてしまった。これでコーヒーがついて880円はすばらしい。毎日でも食べたいくらい。小犬はすごい勢いでペットフードを食べたらミュージシャン控え室のソファでリラックス。グズラという名前が付いた。くつろぐ子犬と望月さん 本当にかわいい、おとなしいオス犬。むだ吠えしないし、ひとなつっこい。うちに庭があれば飼いたいくらい。


森山さんは風邪か、花粉のせいか今ひとつ体調がすぐれない。別室でお休み中、思い立ってドラムセットを組み立ててみることにした。昨日メモしておいたシンバルの位置やタムのセット方法などを頼りに・・・。森山さんのドラム教室に通っていたといっても叩いたことがあるのはほぼ練習台だけ、セットなんて触ったこともない。「Live at Lovely」のCDのライナーノーツにも書いたが、通っていたのはライブ休止中の森山さんに毎週会って「ライブやって下さいよお、先生」と懇願し続けるためだけ。スティックの持ち方に始まって、右左右左と練習台を叩いていたが、雑談や挙げ句の果てには先生(森山さん)の前でオルガンを弾いたりなどという方が多かったように思い出す。もったいなかったかな。でも森山さんを引っぱり出すことに成功したので、あながち無駄だったとは言えないか。動機が不純なだけ、「ドラム教室に通っていたことがある」だけであって「森山さんの弟子」とはとってもいえない。休憩から戻ってこられた森山さんがご覧になって、シンバルが左右間違っているのがわかった。修行が足らないなあ。同じように見えるタムのスタンドも左右があるのね、勉強になります。松浦さんが森山さんに花粉症に効くというユーカリのアロマオイルを差し入れ。


今日は一番前ではなく二階席で拝見することにしよう。こんなアングルでライブを見られることはまずないものね。マスターの小野さんがごあいさつ。「この店は今年の3月30日で10周年になります。もうずっと前から10周年は森山さんと決めていました。今日は人間国宝の森山威男さんの演奏を楽しんでください」どうも森山さんが人間国宝というのを信じた人もいるらしい、それだけの価値があると思うが。


二階席から見るステージMarching 7th。あー、ドラムのチューニング用のキーがフロアタムの上に乗っている、だいじょうぶかな、曲が始まっているのだが、と心配してみているとパッとつかんで放り投げる早業。田中さんアップライトピアノに向かって奮闘。森山さんや音川さんに合図をするのも、後ろを振り返らないと言けないので大変。音川さんのソロの最中、スティックが飛んだら最前列の男性があわてて拾いに立ちそうになった。シンバルが倒れそう、ドラムソロ、途中で掛け声と拍手が飛ぶ。よしよし、盛り上がってるぞ。大音響から小さな音へ。スネアのロール。おおこの席は観客の反応がよく見えていい。
メンバー紹介。今日はこの店の10周年記念によくおいでくださいました。私も10年目はここと決めておりました。


Sun,be motionless。ピアノの音がクリアに聞こえてこない。まあアップライトだから仕方ないといえば仕方ない。ベースがいま一つよく聞こえない、と思ったが昨日中津で並んでいっしょに聴いていたサラさんは今日は下の席で聴いていて、ベースが中津よりもよく聞こえたとおっしゃる。席によってだいぶ聞こえ方が違うのでしょう。ソロを吹きながらのけぞる音川さん、背中がシンバルに当たりそう。うー。熱気がすごい。森山さんしきりに汗をふく。田中さんソロ、森山さんから奇声がとぶ。田中さんの左手すぐのところに座っている女性唖然とした顔で聞き入っている。ドラムソロ、気迫。テーマの終わり、バシ!拍手拍手。みんなすごいーすごいーと口々に。


音川英二!と紹介。耳慣れない曲だと思いますけれど、私も耳慣れないんです。曲名紹介、これは田中信正がこのグループで自分らしい音楽をするんだったらどういう曲をやるんだろうかということでお願いして作ってもらった曲です。徹底的に田中信正をフューチャーしようと思って、信正見参!というCDを作りました。ちょっとドラムが出すぎたような気がしますが(皆笑い)。このグループはテナー奏者が何年もの間に何人も変わりました。最初グループを作ったときは板橋文夫と高橋知己。以来、ベースはずっと望月英明です(皆拍手)。あるベーシストから、どうしてベースをかえないんですかと売り込みみたいにきかれたのですが、「ただずっといるから」以前望月にどうしてずっといるのか聞いたら「辞める理由がないから」。(皆笑い)音川英二の前の井上淑彦というテナー奏者がいたんですが、長くいっしょに演奏してくれて、レコードも何枚も参加してくれていたんです。いい曲をたくさん書いてくれました。故あってグループを去ったのですが、そのまえに書いてくれた曲です。感謝というタイトルがついています。Gratitude


大音響の曲ばかりでなく本当にこんな叙情的な曲も美しくやれるのだからすごいよね。森山さんうたってる。音川ソロ。ブラシのバッキングの使い分けがうまい。そういえば以前井上さんが、他の人にはまねできないと絶賛してたな。他のジャズドラマーのブラシを聴くと、森山さんのような繊細さが感じられないのだ。シャッシャカシャッシャカやればいいってものでもないでしょうに。すばらしいテクニック。素早くマレットに持ち替える。
Free People
望月さんの額にも汗が光る。田中ソロから音川ソロへ。場内熱気。ベース休んでトリオで白熱、ドラムソロへ。響き線をはずしたドラムがアフリカンのように響く。本当によく手が動くなあ。大歓声。二回のお座敷から熟女の「すてきー」の掛け声。

子犬いりませんかここで休憩。小野さんがあいさつ、「この子犬飼って下さる方いらっしゃいませんか。名前はグズラといいます。中津から大分へ移動する際にグズラさんが轢かれそうになっているこの犬を救助しました。飼って下さる方がいらっしゃればドッグフード付きで差し上げます。」どうぞよろしく。

森山さんのドラムヘッド(スネアドラムやタムの、叩くところの皮)が叩きすぎてダメになると、全員のサインを入れて差し上げるというファン垂涎の大じゃんけん大会。田中さんの左横で唖然としていた女性が勝ち抜いてGetしたようだ。

二部スタート。Sound River.テーマの2回目、田中さんが手を休めてしまう。慌てて戻ったが、その次音川さんのソロのスタートから望月さんとのデュオになるので、1回目のテーマで止まってしまったのだろう。緊張感が漂うやりかた、割に好きな出方。ざああああああっと森山さんのロールからドラムとピアノが付け、カルテットの演奏に戻る。二階の席は板の間、足をどうやって伸ばそうかちょっと周りの人に迷惑にならないようにと気を遣う。田中ソロ、森山さんが後ろからバシバシ突っ込む、歓声が飛ぶ。森山さん叩きまくりのままドラムソロに突入。大歓声の中テーマ終了。


ありがとうございました、この曲はテナーサックスの音川英二が作った曲で、名前はサウンド・リバー。訳すと音・川。(笑い)だから言いたくなかったんですけど。(笑い)えー、先ほど、野菜とお米をいただきましてありがとうございます。若いときは東京に暮らしていて、いっぱい人がいてもまだ足りないような気がしていて、もっと人が増えればいいと思っていたんですが、だんだん年をとるうちに田舎の方が良くなって、今は岐阜県の可児市という田舎に住んでいます。たまに東京へ行くと今日は何かお祭りでもあるのかしらんと思うくらい人がいるんで、何年か前には住んでいたのに、そんな風に変わってしまいました。今日はまた、すごい霧の中を車で走ってきて、遠目にすこし景色を見ると、山があり、森がありでいいところで、今住んでいるところよりこういうところに住んでみたいなあという気になりました(拍手)。またもうちょっと走ると、お墓なんかがあったりして・・・やめましょうか(笑い)

若いときにはいろいろつらいことがあったんです、CDのライナーノーツにも恨みを半分だけ込めながら少しだけ書いたんですが、生まれたのは山梨県の勝沼というブドウの産地で、中学生になった時に甲府の町中に引っ越したんですけれど。あ、もともとは大分県だったんです。(ほおーの声)ひいおじいちゃんまで大分県で、夜明けというところ(あるあるの声)、今はダムがあるそうなんですけれど、村中ほとんどが森山姓。ひいおじいちゃんまでの代がそこまでいて、おじいちゃんが医者になるために苦学して東京へ出てきて、その息子が私の父で歯医者になりました。長男は歯医者になって次男は何も勉強もできなかったのでドラマーにでもなれと。国立一期に入った兄貴に負けたくないと芸大を受け、ひょんなことから受かってしまったので・・・・(中略)・・・オーケストラでも聞いたら森山をN響はとりません、いくら頑張ってもとりませんと頭からそう言われてしまったので、そんな世界ならこっちからやめてやるわと芸大に退学届けを出したんですけれど、親切に取りなして下さった先生がいて、・・・・(中略)・・・・ダニーボーイが聞こえてきたんです。めそめそ泣きながら歩いていると、タ・ラ・ラ・ラーと曲が明るくなるところで「元気になれよお!」といわれているような気がして、頑張ろうという気にさせてくれたんです。ダニーボーイです。
音川さんのサックスだけで曲が始まる。例によってデュオが爆発。最後の締めできれいに終わる。


タタン!とサンライズが始まる。松浦奥さん大喜び。ドラムの横に座ってノリノリ、上から見ているとすごく嬉しそうで見ているこっちも楽しくなってしまう。音川ソロから田中ソロへ。ここで森山さんが手を休め、望月田中デュオ。スピード感あるデュオ、リムショットで時々リズムが入る。おお、ロールでドラムが入りそのままドラムソロへ。リズムパターンが打ち出され、拍手、テーマに戻る。拍手拍手。
曲が終了、歓声と拍手の嵐。お座敷から今度は「世界一!」のかけ声。

ありがとうございました。10周年にお呼びいただきありがとうございました。私たちのグループの結成10周年にはどうやってお呼びしましょうか。大きい病気もしましたけど、元気でやっていればいいこともあるなあと、また良い想い出になります。これでおとなしく岐阜へ帰って、来年か、再来年か、5年後か10年後にまた大分へ来る日を楽しみにしています。本当にそれだけ続けてちょうだいよ、森山さん。拍手。

ハッシャバイ始まる。田中さんの手がよく見える。サビで森山さん歌っている。音川さんソロ。ベースソロ。テーマ。拍手が鳴りやまないまま、グッドバイに。ああー、田中さんの和音、美しい。よいわよいわー。森山グループを初めて見た人がほとんどと思われるが、皆上気した顔つき。拍手が鳴りやまない。

今日は自分のセッティングしたドラムがどうか、とか座る位置が他の人と干渉していないか、とか音の響きがどうか、などいろいろ気になることが多く、演奏にのめり込めず。観戦する位置は面白かったが、演奏者との距離の長さと感動の大きさは反比例するということが最近分かってきた。やはりなるべく近くに座りたいものだ。演奏が終わってドラムを一人で片付ける。これも初めて。大体の所は分かるのだが、細かいところに不安が。森山さんはファンに囲まれ、サイン責め。いいのかなーと思いつつ、ご指示を出されないのは任せていただいているのかな、とちょっと頑張る。折れたスティックを拾い、ドラムを習っているという少年にプレゼント。森山ドラム教室

打ち上げは大分医大の学生さんが数人、産婦人科、内科のドクターなど、なぜか医療関係者が多し。音楽をやっている人も多く、特にドラマー多数。お料理はまたまたおいしいネイマの自然食中心。非常にハッピー。ビール、焼酎などいただきつつばりばり食す。望月さんギャグが爆発。この人ほどオンステージとオフステージが違う人も珍しいのでは。しかしどれだけ酔っぱらっていても、記憶は確か。いつどこで誰が誰とどうした、何を言った、というのをしっかり覚えていらっしゃる、感心。覚えていないのはどうやって自宅に帰ったかということだけかも?

話も盛り上がった後、ネイマのお嬢さん(まいこちゃん)に森山ドラム教室がスタート。スティックの持ち方、腕の振り方、力の抜き方・・・先に帰ったドラマーさんたちごめんね。望月さんがちゃちゃを入れるが、レッスンが続く。音川さん、田中さんは真剣に聞き入っている。森山さん体調よさそう。松浦さんのアロマオイルのおかげかしら。明日宮崎まで同行する小野さん、松浦さん夜も更け気が気じゃないが、レッスンはエンドレスで続く。

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