キャバレーで演奏し、小銭を稼いでいた時代がある。 まだ大学在学中の頃だ。 あるときテナーサックスでトラを頼まれた。 (トラとはエキストラの略で、バンドの正メンバーの代わりに臨時に出演するという意味) しかし俺はまだその頃テナーサックスを持っていなかったので ブラスバンドでテナーをやっていた同級生に借りることにした。 代わりを依頼されたのは2nd テナーだった。 その日はショーに入る歌手のリハーサルがあり譜面には書き譜のソロがあった。 (書き譜とは譜面に書かれているソロのメロディー譜) 曲は演歌だった。 この演歌という音楽は経験しないと容易に吹けるものではない。 歌い回し、コブシなどが必要なのだ。 一度も経験したことがない。初体験だ。 初体験・・・・なぜかヤラシイ。。。 あ、話がそれる。 で、その書き譜を吹くと隣にいたパンチパーマで色黒、いかにもその筋と思われても誰も疑わない容姿のオヤジがイキナリ 「そんなふうに吹くんじゃねぇ!貸してみろ!」と譜面を取り上げ 首を振りながら♪ブロロロォ〜〜ッ♪とブローしたのだ。 「わかったか?こーゆーふうに吹くんだ!」 衝撃的である・・・・ サムテイラーとかは知っていたが、ここまで演歌をモノにしている奏者は初めてだ。 その後、俺をじっと見て話かけた。 「なんだ?その楽器は?」 「テナーサックスです」 「バカヤロウ、そんなことはわかってる」 「あ、これですか?友達から借りてきました」 「どこのメーカーだ?」 「ヤマハです」 「ヤマハ?? そんなブリキの楽器なんて使うんじゃねぇ!」 「・・・・・」 「セルマーを使え!」 ブリキの楽器・・・・・ かなりウケた。 まぁ、借りた楽器はヤマハの中で一番安い楽器だったからねぇ〜 数日後、中古でセルマーを買った。 その後その店にはちょくちょくトラで行くことになる。 つづく back number 「 志 向 」 「 祖 父 」 「 メ モ 」 「 ネ タ 」 「 ガッツ石松と具志堅用高 」 「 アンネ 」 「 入口と出口 」 「 長嶋茂雄 」 「 壁 」 「 三宅裕司の奥さん 」 「 願 い 」 「 写 真 」 「 高田純次 」 「 エ ロ 」 「 いたずら 其の一 」 「 いたずら 其の二 」 「 顔 」 「 マイルス 」 「 占 い 」 「 うんこの夢 」 「 小 噺 」 「 セッション 2012 」 「 曲 名 」 「 健康診断 」 「 毒 舌 」 「 北海道 」 「 アメリカン ジョーク 」 「 サックス 」 「 サックス 其ノ二 」 「 学園祭 」 「 グーパンチ! 」 「 気分転換 」 「 やる気なし 」 「 二人会 1部 」 「 二人会 2部 」 「 トラウマ 」 |